次世代パワー半導体デバイスの高速・高周波数スイッチング動作の適用による高電圧パワーコンバータの高効率・小型軽量化と、それに伴って懸念される電磁ノイズの低減・抑制を両立させる回路設計が求められている。本研究は、電磁ノイズを考慮した回路設計論の構築に必要不可欠な、高電圧パワーコンバータにおける電磁ノイズ発生・伝搬メカニズムのモデル化に向け、「パワー半導体デバイスの示すスイッチングノイズのモデル化(ノイズ発生メカニズム)」および「配線・受動素子等の回路構成要素が持つ寄生成分の定量的評価とノイズ電流経路の可視化(ノイズ伝搬メカニズム)」に関する検討を行った。「スイッチングノイズのモデル化」に関して、具体的には、従来のSiパワー半導体デバイスとSiCやGaNに代表される次世代パワー半導体デバイスとの特性差異に着目し、カーブトレーサを用いて静特性および端子間容量の電圧依存性評価を行った。これに基づき、基本構成や動作が簡単な昇圧チョッパ等を例に、回路に用いる受動素子の種類や実装レイアウト、配線パターン、動作電圧・電流など種々の条件をパラメータとして動作させ、それらがダイオードやトランジスタのスイッチング特性に与える影響を評価することで、ノイズ発生源のモデル化およびその妥当性検証を行った。「寄生成分の定量的評価と相互磁気結合のモデル化」に関して、回路基板上の配線に存在する微小な寄生インダクタンスを対象とし、電磁界解析だけでなくSパラメータを用いたインピーダンスの実測評価をあわせて行うことで、両者の同定結果がおおよそ一致することを確認し、それぞれの妥当性を示した。さらに、磁界プローブを用いた近傍磁界分布の評価により、ノイズ電流の発生源及び伝搬経路の可視化を行うことで、配線構造がノイズ伝搬に及ぼす影響を評価した。
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