研究課題/領域番号 |
15H06360
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
末岡 裕一郎 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50756509)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | 制御 / 自律分散 / 場 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,多数の自律移動体(エージェント)群に対して直接的に制御則(コントローラ)を設計することなく,少数の指揮者のような存在によってそれらを導く場を創る.そして各自律移動体がその場に従って動くことのみで,群れ全体として多彩な振る舞いを引き出すことにある. この目的を達成するために,初年度は力学系のベクトル場における「沈点」や「源点」にまずは着目した.沈点はエージェント群を吸い込む場を創り,源点はエージェント群を湧き出す場を創る.そこで,この2種類の対象をどのように配置すれば,群れを適切に誘導するような場を創成することができるのか解析した. また,実機実験において“音”,“光”という物理メディアを用いることで,実世界における場の創成,およびロボット群誘導の実機検証を行った.実機実験にて,1体ずつロボットを順番にある地点へ集める集合タスク,および2点・3点・4点間を巡回するルート形成タスクが実現できることを確認した.また,“音”に基づく場の創成では,ある方向からは強い場が形成されるなどの異方性があること,および壁や環境によって創成される場の形状が大きく異なることが分かった.その一方で,“光”は壁を含め環境からの外乱に対してロバストに場の形成を実現できることが分かった.このようにシミュレーションではなく,現実世界において「場」の創成に基づく群ロボットの陰的誘導が実現できたこと,そしてそれぞれの物理デバイスごとの場の創成法の特徴が分かったことには大きな意義があると言える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多数の移動体に対して直接的にコントローラを設計するのではなく,少数エージェントによってそれらが適切に導かれる場を創る.さらにその場をリアルタイムに作り変えていくことで,大規模移動体を我々の意図したように動かすことを目的としている. まず,シミュレーションに基づく解析を行い,その点に引き込む場を創る“沈点”,およびその点から湧き出す場を創る“源点”をうまく組み合わせることで大規模移動体を誘導できることを確認した. また,実機実験において“音”,“光”という物理メディアを用いることで,実世界における場の創成,およびロボット群誘導の実機検証を行った.実機実験にて,1体ずつロボットを順番にある地点へ集める集合タスク,および2点・3点・4点間を巡回するルート形成タスクが実現できることを確認した.また,“音”に基づく場の創成では,ある方向からは強い場が形成されるなどの異方性があること,および壁や環境によって創成される場の形状が大きく異なることが分かった.その一方で,“光”は壁を含め環境からの外乱に対してロバストに場の形成を実現できることが分かった.
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今後の研究の推進方策 |
場の創成・制御に基づく大規模移動体の陰的誘導を目的として,場の創成における理論的な考察をより深めていく.主として場の動的な変化,いわば場のリアルタイムな“形状変化”に伴い,ロボット群の振る舞いがどのように変化するのか解析する. 場の形状変化をもたらす要因としては,「1.力学系における渦心点(center),鞍点(saddle)という場の幾何形状の変化をもたらす対象を導入すること」,また,「2.場を創る対象を動かすこと」などが挙げられる.そこで,本年度はリアルタイムに場を作り変え,場によって群ロボットを適切に誘導するための理論構築にまず取り組む.ポイントは大規模移動体と場を創る対象の速度比,および各移動体が場の状態を観測するレートだと考えられることから,この点を重点的に解析する. 実機実験では,場を創成するデバイスを音,光など様々検証していく.同時に,それらを検出できるロボット群を10台程度試作する.環境状況に応じて適したデバイスが異なることが予想されるため,屋内・屋外においてロボット群を用いて実機実験を行いつつ,理論・実験双方向からのアプローチによって実世界に適応しうる場の制御に基づく大規模移動体の陰的誘導論を構築する.
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