本研究の目的は,多数の自律移動体(エージェント)群に対して直接的に制御則(コントローラ)を設計するのではなく,少数の指揮者のような存在によってそれらを導く場を創る.そして各自律移動体がその場に従って動くことで,群れとして適切なナビゲーションを引き出すことにある. この目的を達成するために,最終年度は音を用いた場の創成・制御を実空間(種々の環境)にて取り組むと同時に,群ロボットのナビゲーションを実施した.例えば,障害物がある場合とない場合において,空間にどのような場が創られるのか解析した.また,音場を創るにあたり,どのような高さから音を出すことが良いのか,どの周波数の音を出すことが良いのか検討を行った.さらに,ロボット本体に実装する制御則も同時に探求し.音の聞こえる/聞こえない,という2種類の情報を,直進,回転という行動に割り当てるというシンプルな行動アルゴリズムのみで,ロボット群を誘導できることを確認した. 障害物がないケースにおいての群ロボットの誘導を実現できただけでなく,障害物が存在するケースにおいては音の回折現象を利用することで,障害物を回り込む動きを自然と実現できたことは興味深い結果だと言える.さらに,異なる周波数の音を同じ空間に重ね合わせ,ロボットがその音を聞き分けることで広範囲のロボットの誘導に成功した.これは複数音源による音場の共創,制御が実現できたことを示唆している.
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