研究課題/領域番号 |
15H06362
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大倉 史生 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (60754223)
|
研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
|
キーワード | 酪農 / コンピュータビジョン / ロコモーションスコア / 個体識別 |
研究実績の概要 |
データベース構築:計画初年度である平成27年度は、RGB-Dカメラを継続的に牛舎に設置し、牛の静止時・歩行時を対象とした数ヶ月間にわたる計測を行った。牛舎における計測時におこる衛生状態等の問題を解決するため、カメラ用ハウジング等の撮影設備を製作した。また、撮影されたRGB-Dデータに獣医師らにより測定された健康状態スコア等の健康状態に関する知見を継続的に付与し、データベースに登録した。 個体識別:大規模データベース構築と並行して、牛歩行映像からの健康状態推定のための個体識別手法を開発した。具体的には、平成26年度より開発を開始した乳牛の歩行シルエットを用いた個体識別手法を発展させるとともに、牛の斑紋情報を併用することで高精度な識別を実現した。斑紋情報の活用により、100%の個体識別率を達成した。本研究の成果を国内研究会において発表するとともに、英文論文誌への投稿を予定している。 ロコモーションスコア推定手法の開発:体表面の形状特徴等を用いた健康状態スコアの自動推定手法を開発した。具体的には、代表的な健康状態スコアの一つであり、乳牛の蹄病検出に利用されるロコモーションスコアを対象とした自動スコア推定手法を構築した。背全体の丸みおよび歩行時の足の運びを特徴量とし、回帰分析によるスコア推定を実現した。本研究で構築したデータベースを用いた実験により、従来の画像処理によるロコモーションスコア推定手法を上回る推定精度を実現した。本研究の成果を国内研究会において発表予定である。 健康状態スコア推定に関する基礎検討:本研究で取り扱う代表的な健康状態スコアのうち、ロコモーションスコアを除く2つ(ルーメンフィルスコア、ボディーコンディションスコア)について基礎検討を行い、乳牛の三次元形状解析に基づく自動推定手法を考案した。ロコモーションスコア推定手法とともに、特許出願を予定している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究実施計画で想定していた、(1)データベースの構築、(2)個体識別、(3)健康状態スコア推定の基礎検討について、実際に平成27年度に全て実施した。 (1)データベース構築については、RGB-Dカメラを継続的に牛舎に設置し、牛の静止時・歩行時を対象とした数ヶ月間にわたる計測を行った。牛舎における計測時におこる衛生状態等の問題を解決するため、カメラ用ハウジング等の撮影設備を製作した。また、撮影されたRGB-Dデータに獣医師らにより測定された健康状態スコア等の健康状態に関する知見を継続的に付与し、データベースに登録した。 (2)個体識別について、平成26年度より開発を開始した乳牛の歩行シルエットを用いた個体識別手法を発展させるとともに、牛の斑紋情報を併用することで高精度な識別を実現した。斑紋情報の活用により、100%の個体識別率を達成した。本研究の成果を国内研究会において発表するとともに、英文論文誌への投稿を予定している。 (3)健康状態スコア推定について、ロコモーションスコアを対象とした自動スコア推定手法を構築した。背全体の丸みおよび歩行時の足の運びを特徴量とし、回帰分析によるスコア推定を実現した。本研究の成果を国内研究会において発表予定である。また、本研究で取り扱う代表的な健康状態スコアのうち、ロコモーションスコアを除く2つ(ルーメンフィルスコア、ボディーコンディションスコア)について基礎検討を行い、特許出願を予定している。
これらの成果は、おおむね研究実施計画で想定した通りの成果であるといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
計画年度の最終年度である平成28年度は、初年度構築されたデータベースおよび健康状態推定に関する初期検討に基づき、健康状態(ルーメンフィル・ボディーコンディションスコア)推定手法の実装・評価を行う。 ルーメンフィルスコアは、乳牛左後部のルーメン(第一胃)窩のへこみ量を獣医師等が目視で観測することにより決定される。本研究では、ルーメンフィルスコアの自動推定のために、当該領域の形状特徴を特徴量として回帰分析を行う。平成27年度に、有望な特徴群についての初期検討を実施した。検討結果に基づきスコア推定システムを実装し、目視の観測で得られた真のスコアとの比較・評価を行う。 また、従来から尾部の三次元形状や上方からの観測に基づくシルエット形状を用いたボディーコンディションスコアの推定が行われてきたが、本研究は背部の形状を用いて推定の高精度化を図る。ルーメンフィルスコア同様、平成27年度に実施した初期検討において有望であると考えられる特徴量について、実装・評価を行う。 平成27年度に構築されたロコモーションスコア推定手法を含め、3つの代表的な健康状態スコアを一台のRGB-Dカメラによる入力から推定可能とする。そのために、乳牛の歩行映像からのスコア推定のために最適なカメラ配置を検討する。具体的には、牛舎に複数台のカメラを設置し、撮影データを比較することで、スコア推定精度およびシステムの実用性・実現性の両面から最適なカメラ配置を決定する。データベース構築を次年度も継続し、時系列的な解析による異常検出手法を開発する。具体的には、長期間の健康状態スコアおよび、スコアの推定に用いる特徴量の変化を検出する手法を開発する。異常検出は乳牛管理の効率化に資するとともに、それらを可視化することにより新たな知識の獲得を促す。
|