研究課題/領域番号 |
15H06366
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高橋 秀樹 大阪大学, 微生物病研究所, 特任研究員(常勤) (20754906)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | ワクチン / 感染症 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、直径50nmのウイルス様ナノ粒子(Virus Like Nano-Particle:VLNP)の表面にCpGオリゴを結合させた、CpG含有VLNPの合成と物性評価、及び生体へ投与した際の抗原特異的免疫誘導におけるアジュバント能を評価した。まず物性を評価するにあたり、CpGオリゴを自己会合ペプチドに化学結合させた新規ペプチドを、共同研究者である鳥取大学・松浦和則先生に合成いただき、これを用いて合成したCpG含有VLNPの溶媒中における平均二次粒子径や表面電荷を動的光散乱法、及びレーザードップラー法を用いて解析した。また透過型電子顕微鏡を用い、形状や凝集状態についても解析を行った。 次に、合成したCpG含有VLNPのワクチンアジュバント能をin vitro、in vivoで評価した。in vitroに関してはマウスの骨髄由来の樹状細胞(マウスの骨髄を回収し、Flt3Lと1週間共培養することで誘導)に合成したCpG含有VLNPを添加し、産生されたサイトカインをELISAにより定量解析した。その結果、CpG含有VLNP添加群において、CpG単独添加群と比較してサイトカイン産生量の上昇が認められた。in vivoにおける検討では、鶏卵白アルブミン(OVA)をモデル抗原とし、CpG含有VLNPと共にマウスに投与した。その後、抗原特異的な細胞傷害性T細胞(CTL)の誘導をテトラマーアッセイ法により評価した。その結果、群数が少ないものの、CpG単独投与群と比較して、CpG含有VLNP投与群ではCTLの誘導が促進される傾向が認められた。 以上の結果から、CpG含有VLNPは未修飾のCpGと比較して、アジュバント能が上昇していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に実施予定であったCpG含有VLNPの合成やその物性の評価、in vitro、in vivoにおけるワクチンアジュバントとしての有効性評価を実施し、CpG含有VLNPのアジュバントとしての有用性を示唆するデータが得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度には、CpG含有VLNPのワクチンアジュバントとしての有用性を評価した。一方で、vivoに関する検討はより詳細にデータを取得する必要がある。そのため平成28年度には、より群数を増やしてCTLの誘導能を評価すると共に、抗原特異的抗体価の誘導能評価もあわせて実施する予定である。また、TLRリガンドを基にしたアジュバントでは、目的外の組織において、過剰な炎症反応が惹起され、副作用が誘発される可能性が懸念されている。そこで本年度には、合成したCpG含有VLNPの安全性確保に向けた検討を実施する予定である。具体的には、ワクチン効果に必要な投与量から10倍量程度のCpG含有VLNPをマウスに投与した後、経日的に、投与部位の腫脹、体重変化、血球数、血液生化学マーカー(ALT、AST、BUNなど)、血液凝固、血液中サイトカイン量の測定など、一般的な毒性試験を実施する。また申請者は、これまでの研究から、ナノ粒子はリンパ節に積極的に移行すると共に、樹状細胞に取り込まれやすいことを見出している。そこで、VLNPの細胞内動態を精査することで、CpG含有VLNPの優れたワクチン誘導効果を検証する。具体的には、マウスの骨髄由来の樹状細胞に、蛍光修飾CpGや蛍光修飾自己会合ペプチドを用いて作製したCpG含有VLNPを添加し、共焦点顕微鏡およびフローサイトメータを用いて、定性・定量的に取り込み効率を評価する予定である。
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