これまで我々は、マウス初期胚の心筋前駆領域由来の単一細胞cDNAに対する次世代シークエンサーを用いた網羅的発現プロファイリングを行ってきた。本研究では、この解析によって判明した心筋前駆細胞特異的表面マーカー候補34遺伝子について、まず、抗体がコマーシャルベースで利用可能である9遺伝子について、心筋前駆細胞特異的表面マーカーとしての、妥当性と実用性を検討を開始した。 CD1マウスの7.25-8.00日胚を回収し、Whole mount in situ hybridization法によって、候補遺伝子が心臓前駆領域で発現しているかどうかを検討した。 まず検討した5遺伝子において、2遺伝子が心臓前駆領域で発現していた。詳細に検討を行った1遺伝子については、免疫組織染色を用いて、タンパクレベルでもマウス胚心臓前駆領域で発現していることが確認された。さらに、マウスES細胞とヒトiPS細胞を用いた、心筋細胞分化誘導系においても発現が確認され、このマーカーを用いて、効率的に心筋細胞へと分化する前駆細胞を収集することが可能であった。マウスES細胞から得られたこの心筋前駆細胞を、免疫不全マウスの心臓に移植することによって、ES細胞由来の心筋前駆細胞の生着を認め、細胞移植によっても生体内で心筋細胞へと分化することを確認した。
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