研究課題
造血幹細胞はニッチと呼ばれる骨髄微小環境で維持されており、自己複製や分化を精緻に制御しているものと考えられている。一方、抗腫瘍薬投与などによる骨髄抑制後には、造血幹細胞の細胞周期が回転し、活性化することが知られているが、その詳細なメカニズムは明らかになっていない。そこで本研究の目的は、生理的状態と骨髄抑制後の造血幹細胞を解析することにより、造血幹細胞活性化の分子機構を明らかにすることである。そのために、まず二光子励起顕微鏡を用いてマウス骨髄内の造血幹細胞の可視化を行った。生きたマウスを麻酔下に頭部の剃毛と皮膚切開をした上で固定台上に固定し、正立型二光子励起顕微鏡を用いて骨髄内を長時間撮影することに成功した。抗腫瘍薬による前処置を施したレシピエントマウスに移植された造血幹細胞と、前処置を施さないレシピエントマウスに移植された造血幹細胞について、骨髄内における細胞運動や微小環境(ニッチ)との位置関係を継時的に解析した。結果として、前処置施行マウスに移植された造血幹細胞の多くが、骨髄内の血管性ニッチに存在することが示された。更にホーミングした造血幹細胞の遺伝子発現をRNA-Seq法を用いて網羅的に解析したところ、細胞周期関連の遺伝子発現が環境変化に応じて活性化することが明らかとなった。以上の結果より、骨髄抑制後に生じる微小環境変化が、移植造血幹細胞の挙動や細胞周期に影響を与えうることが示された。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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PLoS One
巻: 11 ページ: e0154189
10.1371/journal.pone.0154189
Exp Hematol
巻: 44 ページ: 269
10.1016/j.exphem.2015.12.010.