研究実績の概要 |
腹腔内F(ab)’2投与により、一時的にT細胞受容体(TCR)発現を減弱させた状態で、水酸化アルミニウム(Alum)をアジュバントとしてnitrophenyl基修飾chicken gamma globulin (NP-CGG)でWTマウスを免疫したところ、F(ab)’2投与群において著明なgerminal center B (GCB)細胞数の低下、及び抗原特異的高親和性抗体の産生低下を認めた。しかし、B細胞分化に重要な役割を果たす濾胞性ヘルパーT細胞(Tfh)に関しては、減少傾向が認められたものの有意ではなかった。次にF(ab)’2が自己免疫疾患発症や進展を抑制しうるかどうかを確認するために、Fas遺伝子に変異をもち、早期に激しい自己免疫疾患を発症するMRL/lprマウスに3週間F(ab)’2の投与を試みた。その結果、投与3週間後の自己抗体価に有意な変化は認められなかったものの、CD4+Foxp3+CD25+ Treg細胞数がF(ab)’2投与群で著明に上昇していることが確認された。CD3抗体が直接的に作用してTregを上昇させているかどうかはまだ不明である。これらのことから、抗体産生反応の減少が、Tfh分化抑制か、あるいはTreg増強効果を介したものであるかをさらに検討している。さらにTfh細胞の中にも抑制性のフェノタイプの集団(follicular regulatory T cell, Tfr)が存在することも最近ではわかってきている。抗体投与にてこのような細胞集団が誘導されているか否かを今後も引き続き検討していく予定である。
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