研究課題/領域番号 |
15H06378
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松本 有里 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (90756488)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | TRL / TAN / CD66b / G-CSF |
研究実績の概要 |
我々は、腫瘍随伴白血球増多;Tumor-related leukocytosis (TRL) を伴う子宮体癌における予後不良のメカニズムの解明を目標として、腫瘍に浸潤した好中球であるTumor-associated neutrophils (TAN), および末梢血中の好中球による腫瘍増殖・転移促進効果に焦点をあて、TRLを伴う子宮体癌における、①TANの臨床的意義についての検討 ②TAN が子宮体癌の浸潤能、遊走能に及ぼす影響の検討 ③末梢血中の好中球が転移予定の臓器における前転移ニッチ形成に与える影響、の解明を目指して研究を行ってきた。 平成27年度は、子宮体癌においてTRLが有意な予後不良因子であることについて研究成果をまとめ論文発表をおこなった。また、【1】TANの臨床的意義についての検討【2】TRLを伴う子宮体癌の実験モデルの樹立、を目標とし、研究を実施してきた。 まず予備実験として、倫理委員会の承認の下に根治放射線治療を受けた子宮頸癌250症例を対象に検討を行った。過去の報告を参考にCD66b陽性細胞をヒトにおけるTANと定義し、抗CD66b抗体にて免疫組織染色を行い、腫瘍中へ侵入するTANの染色強度と治療前白血球数、また予後との関係を検討した。TANの染色強度が強い症例では治療前白血球数>10,000である頻度が有意に高く (p<0.0001)、再発率 (p<0.0001)、生存率 (p<0.0001) が有意に上昇することが確かめられた。子宮体癌症例について現在検討を行っている。 TRLを伴う子宮体癌のマウスモデルを樹立するため、子宮体癌細胞株(ISHIKAWA株)にG-CSF発現ベクターまたはMOCKを安定導入(リポフェクタミン法)し、G-CSF産生株およびコントロール株を樹立し、G-CSFの発現をELISAおよびRT-PCR法にて確認した。現在樹立したG-CSF産生株およびコントロール株を、ヌードマウスの皮下に移植しG-CSF産生株担癌マウスとコントロール株担癌マウスにおける①白血球数・好中球数、②血中G-CSF濃度、③腫瘍発育速度、④転移部位、⑤生存期間を比較している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記【1】,【2】がおおむね達成されているため
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今後の研究の推進方策 |
TRLモデルに関しては、転移が起こる前に全身状態の増悪で死亡してしまうケースが多く、皮下移植する腫瘍細胞数の調整を行い、検討を重ねている。実験モデルが作成でき次第、子宮体癌に侵入した TAN の機能についての検討と転移予定臓器における好中球の機能についての検討を、当初の計画にそって継続する。子宮体癌に侵入した TAN の機能についての検討としては、TANを子宮体癌細胞と共培養し、TANが子宮体癌細胞の浸潤能に与える影響についての評価を行う予定である。転移予定臓器における好中球の機能についての検討としては、転移予定の臓器に好中球が浸潤し前転移ニッチが形成されるか?また好中球阻害により転移が抑制されるか?の検討を行う予定である。
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