研究実績の概要 |
口唇口蓋裂をはじめとする先天性の顎顔面奇形は顎顔面骨格の発育異常や永久歯萌出異常による歯列不正が併発することで、咀嚼・発音等の口腔機能障害と顔貌の審美障害をきたし、治療において矯正歯科治療は中心的役割を担う分野である。これらの先天性の顎顔面奇形や形成異常をきたす患者は臨床症状に対する対症療法としての治療が主軸であり、遺伝子の変異、発現様式について同定されていないことがほとんどである。 本研究の目的は、これらの患者および家族における顎顔面形成異常に関わる既知や未知の遺伝子変異やSNPs を同定し、口腔顔面領域の発生、発育に関わる新規遺伝子、遺伝子間のシグナルを探索し、疾患の発生機序を明らかにするとともに、遺伝子変異のデータベースの構築と新たな分子診断法の確立を図ることである。 平成27年度では、本研究に協力の同意が得られた口唇口蓋裂を複数名発症している1家系(内訳 罹患者3名、非罹患者1名)についてエクソーム解析を行った。その結果、解析対象者1名あたり約100,000個の一塩基多様体(SNV; single nucleotide variation)が検出され、そのうち罹患者3名のみに共通する86個のSNVが検出された。これまで口唇口蓋裂に関することが示唆されているMSX1、IRF6、TGFB3といった既報遺伝子の変異は検出されなかった。今後、変異が見られたこれらの遺伝子から口腔顔面領域の発生や発育に関わると推測される遺伝子の絞り込みを行うため、さらに異なる家系においてもエクソーム解析を行う予定である。
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