研究実績の概要 |
口蓋裂をはじめとする先天性の顎顔面奇形は顎顔面骨格の発育異常や永久歯萌出異常による歯列不正が併発することで、咀嚼・発音等の口腔機能障害と顔貌の審美障害をきたし、治療において矯正歯科治療は中心的役割を担う分野である。これらの先天性の顎顔面奇形や形成異常は臨床症状に対する対症療法としての治療が主軸であり、遺伝子の変異や発現様式が表現型に及ぼす影響については同定されていないことがほとんどである。 本研究の目的は、顎顔面形成異常に関わる既知や未知の遺伝子変異やSNPsを同定し、疾患の発生機序を明らかにするとともに、遺伝子変異のデータベースの構築と新たな分子診断法の確立を図ることである。 今回、口唇口蓋裂を1家系内で複数名発症している家系を対象に研究協力を行い、同意が得られた3家系9名(内訳 罹患者7名、非罹患者2名)についてエクソーム解析を行った。その結果、既報であるものも含め、解析対象者1人あたり約100,000個の一塩基多様体(SNV; single nucleotide variation)が検出された。罹患者のみに共通するSNVとしては1家系目で86個、2家系目で155個、3家系目で118個検出されたが、3家系全てに共通するSNVは見られなかった。また、口唇口蓋裂において報告されているMSX1、IRF6、TGFB3といった既報遺伝子の変異も検出されなかった。今後、1家系目と2家系目で見られた近接した同一遺伝子の2変異についてマウスモデルを作製し、解析を行う予定である。
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