本研究は、小学校における教室内での問題行動への対応方法として、能動的なアプローチを提案することを目的として行われた。平成28年度は、主に研究協力校において教室内での観察を行い、教師の児童への働きかけに関するデータ収集を行った。収集された記述データを、KJ法により働きかけの機能面から分類したところ、先行研究において指摘されているものとほぼ同様の種類が認められた。さらに、コーディングによってこれらの教師行動の頻度を学年ごとに整理したところ、低学年では児童の行動に対する教師の「反応的な対応」が多く認められ、とくに行動の逸脱が起こりやすい低学年においては、「能動的な対応」を増加させることにより、「反応的な対応」が必要とされる機会を減少させることが必要ではないかと考えられた。これらの結果については、今年度の国際学会にて発表の予定である。さらに、指導上困難のある児童と、その他の児童との間での教師の働きかけに対する反応の違いを明らかにするため、観察研究を行った。初年度に行った文献研究において整理されたこれまでの知見と、平成28年度に行った観察研究の結果とを統合し、能動的な学級経営の方法をまとめ、学会誌に投稿する予定である。 また、教員養成課程を持つ日本国内の大学において、学部生を対象とした学級経営に関する講義がどの程度行われており、どういった内容が扱われているかを、シラバス検索によって調査した。今後は、行動マネジメントの観点から見た学級経営のアプローチを伝達する講義を計画・実施し、効果の検証をしていく予定である。
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