研究実績の概要 |
本研究は、年金や介護保険等の社会保障政策が人々の労働や主観的幸福度に与える影響について因果関係の推定を行うことである。特に、通常、観察できない政策から得られる効用の変化を分析するために主観的幸福度を代理変数として使用する。 具体的な研究内容としては、(1) 介護保険制度が家族介護者の介護時間や労働時間、そして主観的幸福度、精神的な負担感に与える影響を分析する。日本とヨーロッパの中高齢者のパネルデータを使い、各国の介護保険制度の違いと家族観の違いがこれらの変数に違いを生んでいるかを明らかにする。(2) 第3号被保険者の厚生年金分割制度の導入により、中高齢女性の離婚率が上がったか、また、離婚を経験した中高齢女性の労働や所得および資産に与える影響を測定する。(3) 東日本大震災の被災者が受けた支援の中で、どれが主観的幸福度と経済状況の観点から効果的だったかを明らかにする。東日本大震災という突発的な自然災害を利用し、因果関係の推定を行う。 (1)については、ヨーロッパの中高齢者パネルデータの「The Survey of Health, Aging and Retirement in Europe (SHARE)」と日本の中高齢者パネルデータ「くらしと健康の調査(JSTAR)」を使った分析を行うため、介護保険制度発祥のオランダの介護保険制度の現状と歴史について調査を行った。(2)については、制度の概要を調査し、女性の貧困対策に関する研究のサーベイを行った。(3)については、進捗状況なしである。
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