本研究では、オランダにおけるピースフルスクールプログラムの理論と実践、およびそこでの教育の質を維持・向上させるための取り組みを検討することを目的としている。そのために、オランダのピースフルスクールでの現地調査や、ピースフルスクールプログラムの開発者へのインタビュー調査、さらには関連資料の文献調査等を行い、検討を進めてきた。 その結果、ピースフルスクールのカリキュラムの特徴は、①毎年6つのブロック(毎年同じテーマ)を少しずつ深める形で、週に一度ピースフルレッスンという授業が組まれていること、②子どもたちの間の衝突を仲裁するメディエーター(仲裁者)を高学年の児童に育成すること、③子どもたちに育みたい市民性を教職員自ら、さらには地域の方や保護者にも実現しようとすることの3つにあるといえた。 こうしたプログラムの質を維持・向上させるためには、授業であるピースフルレッスン自体の評価とともに、メディエーターの育成や彼らの活動、教職員自らの市民性や保護者の参加、さらにそれらを支える教育環境など学校全体に関わるレベルで評価・改善活動が行われていた。子どもの事実をふまえつつ、学校内・外に民主主義的な文化が形成され維持されるよう、組織的・共働的な取り組みが行われていた。このように、限定的な側面での短期的な改善を目指すのではなく、長期的に学校文化そのものを改革していくことが学校改善の鍵となるであろうことを明らかにした。これは、ピースフルスクールに限ったことではないと思われた。これらの成果は、研究論文、著書、学会発表などにおいて発信を行った。
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