レジオネラ症は、レジオネラ属菌を含むエアロゾルや塵埃を吸入することにより発症する疾患であるが、感染源を特定できるものはわずかであり、大半の症例は感染源が明らかではない国内単発症例である。そして、その疫学は未だ明確には把握されていない。本研究ではレジオネラ症の疫学的傾向の把握と日本における環境因子とレジオネラ症患者発生との関連の検討を行うこととしている。 本年度は日本における気象(平均気温・平均相対湿度・降水量)とレジオネラ症発症との関連及び職業別及び産業別にレジオネラ症患者の標準化罹患比(SIR)を検討した。 気象(平均気温・平均相対湿度・降水量)とレジオネラ症発症との関連について、レジオネラ症は7月を中心に増加、翌3~5月にかけて減少する傾向が認められ、近年、その季節変動は明確になってきていた。また、レジオネラ症の潜伏期間にあたる時期である発症5~15日前の日平均相対湿度1%増加あたりオッズ比は1.003-1.010、発症5~11日前の日降水量1mm/日増加あたりオッズ比は1.002-1.006であり統計学的に有意な関連が認められた。発症と日平均気温については明らかな関連は認められなかった。近年、レジオネラ症は増加傾向にあり、レジオネラ症患者発生に関連する曝露要因についてさらなる研究を行っていくことが必要であると考える。 また、職業別及び産業別にレジオネラ症患者の標準化罹患比(SIR)を計算した。結果、職業や産業によりレジオネラ症を発症するリスクが異なることが示唆された。特に、建設・採掘業関係者、輸送業関係者でレジオネラ発症のリスクが高かった。これは、職業や産業に依存し、土壌細菌であるレジオネラ属菌の環境からの曝露を受ける確率が変化することを示唆する結果である。職域におけるレジオネラ症の予防には、職業曝露の視点を含めた対応・対策を行うことが重要であると考える。
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