アトピー性皮膚炎(AD)は長期間にわたり、痒みを伴う湿疹を繰り返す疾患である。これまでAD患者では、湿疹部の皮膚表面から黄色ブドウ球菌(S. aureus)が高率に検出され、さらに健常人に比べ皮膚の細菌感染症に罹患することが多いことが知られていた。しかし、なぜAD患者にのみS. aureusが高率に定着し、それらが皮膚にどのような影響を与えているのかは明らかになっていない。本研究では、AD患者の皮膚より分離したS. aureus株が、標準のS. aureus株と比較して、どのような免疫反応を誘導するのかについて検討を行った。 皮膚ではランゲルハンス細胞(LC)が、皮膚から侵入する病原体を察知し、T細胞に抗原提示を行うことで病原体の駆除が誘導され、皮膚の恒常性が保たれている。本研究ではこの免疫応答系におけるS. aureusの反応を解析するために、健常人とAD患者のそれぞれから末梢血単核球由来のLC(MoLC)とT細胞を分離し実験に供した。また、S. aureusについても、標準株とAD患者の皮膚より分離したAD由来株の2種類を使用した。それぞれのS. aureus株で刺激したMoLCを同一ドナー由来のT細胞と共培養を行い、T細胞の増殖およびサイトカインの産生を解析した。AD由来株で刺激されたMoLCは、より多くのT細胞の増殖を誘導した。またAD由来株はT細胞からのIFN-γの産生を減少させ、共培養後のT細胞のmRNAはT-bet/Gata3比が減少していた。なお、健常人とAD患者間には違いは見られなかった。本研究により、S. aureusのAD由来株は、標準株とは異なるランゲルハンス細胞を介した免疫反応を示すことが明らかとなった。
|