本研究は胸部悪性腫瘍、特に肺癌、悪性胸膜中皮腫の腫瘍細胞がBNPなどを分泌し、それがautoctine pathwayにより下流シグナルを伝達し、腫瘍細胞の生存や増殖に関わるという仮説の元に開始した。 現在までに肺癌、悪性胸膜中皮腫細胞がBNPを分泌している証拠は示されていない。しかし、これらの腫瘍細胞は様々なsmall RNAを発現しそれらを細胞外に分泌していることが知られている。 我々はこのsmall RNAに注目し、腫瘍が分泌する癌特異的small RNAを同定する為に肺癌、悪性胸膜中皮腫患者の血清からRNAを抽出しsmall RNAの発現レベルを次世代シークエンサーを用い網羅的に解析した。健常人の血清中small RNAと比較することにより、現在までに肺腺癌患者に有意に高発現あるいは低発現しているsmall RNAを複数同定した。これは別の次世代シークエンサーにおいても同様の発現傾向が確認された。これらの癌特異的small RNA候補に関してその発現レベルを別データセットの肺腺癌患者血清、健常人血清を用いRT-QPCR法にて確定中である。またこれらの候補small RNAに関して肺腺癌細胞株を用いてその培養液上清にsmall RNAが発現しているかを検討中である。 これらのsmall RNAは癌の診断マーカーとして利用できる可能性が期待できる。またその機能についても解析を予定している。
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