本研究では、脊髄損傷モデルラットに対して間葉系幹細胞を用いた細胞治療を行い、その効果を検証した。また、間葉系幹細胞を使用した細胞治療の効果をより高めるために細胞移植後のリハビリテーション治療に着目した。脊髄損傷では、損傷部以遠の重篤な運動・感覚障害を呈し適切な歩行刺激の入力が困難であるため、適切な歩行刺激の入力を実現するために免荷型歩行補助装置を使用した。脊髄損傷モデルの作成には、weight drop methodを使用することで再現性のあるモデル作成が可能であった。脊髄損傷モデルラットに対する間葉系幹細胞の移植効果として、細胞移植を行うことで細胞移植を行わない群と比較して運動機能が改善する結果が得られた。また、損傷後の脊髄組織において、組織の炎症に関連する遺伝子発現が細胞移植によって抑制されることが明らかとなった。損傷組織への移植細胞の生着はきわめて少なく、移植細胞から放出される栄養因子が炎症反応を抑制したことが回復の作用機序として考えられた。また、免荷型歩行補助装置を用いた細胞移植後のリハビリテーションについて検討を行った。その結果、荷重下では自発運動がみられない時期においても、免荷環境下では一部自発運動を観察できたが、長期的な使用効果や細胞治療との併用効果については十分な検討が行えなかった。本研究成果の一部は再生医療関連の国内学会(第16回日本再生医療学会総会)で発表した。
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