申請者らは食物を舐めて摂取する口腔機能に着目し,その機能を指示理解が困難な認知症高齢者でも評価可能な方法としてCandy Sucking Test (CST) を開発した.本研究では,CST値と栄養状態の関連を明らかにすることを目的とした. 要介護高齢者31名に対してCSTの実施を試みるとともに栄養状態を評価した.さらに6カ月後に同様の調査を行った.認知機能評価は,Mini - Mental State Examination (MMSE),身体機能評価は,Barthel Index (BI)を用い,食事形態の調査に加えて管理栄養士によりタンパク質およびエネルギー摂取量を調査した.栄養状態の評価には,BMI,Mini Nutritional Assessment (MNA) - SF,血清アルブミン値を調査した. CSTは31名中30名に対して実施可能であった.縦断調査の分析対象は28名であり, 25名にCSTが実施可能であった.横断調査にて栄養状態にタンパク質の摂取量とBIが関係することが示唆され,十分なタンパク質の摂取には高いMMSEと普通食の摂取が関係する可能性が示された.一方で,CST値と栄養状態との関連は明らかにならなかった.縦断調査において,6カ月間の体重減少率5 %を低栄養の基準とすると,低いMMSE,少ないタンパク質およびエネルギー摂取量,あるいはアルブミン値の低値が低栄養に関連する傾向にあることが示唆されたものの,CST値には関連を認めなかった.そこで,CST値の6カ月間の変化率を算出し,その中央値を基準としてCST低下群とCST維持群に分類するとMNA - SFが低下した者の割合に有意差を認めた. CSTはスクリーニング検査としての活用よりもむしろ複数回検査を実施することで対象者の摂食嚥下機能の変化を捉える検査法として有用かもしれないことが示された.
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