本研究では、医療従事者間の報告談話を対象とし「医療現場特有の言い回し」を明らかにし、外国人看護師候補者に対する専門日本語教育、外国人看護師および日本人新人医療従事者の不確かなコミュニケーションによる医療事故の防止教育に援用することを目的として、看護師の引き継ぎ談話「申し送り」を対象とし、研究を行った。産前・産後休暇および育児休業による中断を経て、本年度(後期半年)では、以下のような研究活動を行った。 ・申し送りにおける頻出語彙のコロケーションを明らかにした。特に格成分の名詞の意味的カテゴリーと述語成分のコロケーションに着目し、分析を行い、申し送りの語彙分析の先行研究の結果などを参考に考察を行った。 ・コロケーションが医学界特有のものか検証した: 国立国語研究所が開発したweb上のコーパス(NINJAL-LWP for BCCWJ、以下NLBとする)を利用し、頻出語彙のコロケーションが一般での使用状況と異なるのか、異なるとしたらどのように異なるのかを分析した(異なる場合は特に注意喚起が必要となるため)(例;「点滴」…点滴を打つ(NLB)、点滴がいっている(医療談話))※NLBは書きことばコーパスなのでその限界に留意した。その結果、日本語の一般的な使用とはかなり異なる特殊なコロケーションが観察された。「いく」「とる」のような一般動詞でその使用が認められたのが興味深い。 ・研究成果の公開・発信: 平成30年3月に名古屋大学にて行われた日本語教育方法研究会で、研究成果をまとめ、ポスター発表を行った。医療の専門日本語教育に関わる研究者と活発な意見交換を行った。また、福祉系雑誌および日本語教育系雑誌に研究成果にかかる論文を投稿し、掲載された。
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