本年度は、平成27年度に開発したAu-Pd-Ti合金を基にアレルギーの懸念のあるPdの一部を耐食性向上目的でPtに置き換えたAu-Pd-Pt-Ti合金を研究対象とした。この合金は、Pt=10~30mass%(以下、%)、Ti=3~5%の組成範囲で磁化率-9ppm示しうる組成が存在することが示唆された。ビッカース硬さは、溶体化処理後で200Hv以上を示し、時効処理後は300Hv程度まで増加し、平成27年度に開発したAu-Pd-Ti合金以上の強度を示すことが分かった。また、歯科用合金であるTypeⅣ金合金(210~290Hv)、金銀パラジウム合金(200~320Hv)同等以上の強度が得られ、本研究の目的は概ね達成できた。磁化率は、時効処理による変化はほとんど見られず、アーチファクトフリーを維持しつつ強度を効果的に向上することが可能であることが分かった。結晶構造解析ではAu-Pd-Pt-Ti合金の構成相は少なくとも3相存在することがわかった。相の特定は間に合わなかったが、時効処理による相の変化は強度を向上させるが、磁化率にほとんど影響しないことが推測された。 以上より、平成28年度の研究により、Au-Pd-Pt-Ti合金は、磁化率-9ppmでアーチファクトフリーを示しうる組成が存在し、アーチファクトフリーを維持しつつ時効処理により効果的に強度を向上することが可能であることが明らかになった。
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