マウスの心臓に対し虚血再灌流実験を行った。プレコンディショニング刺激としてAnesthetic Preconditioning : APC(イソフルラン1.0 minimum alveolar concentration [MAC]を30分吸入)・Glucagon-like peptide-1 : GLP-1 (受容体作動薬Exendin-4 を30 ng/kg iv)刺激を虚血再灌流の負荷前に行いAPC群・GLP-1群を作成した。その後虚血再灌流実験(30分の虚血と2時間の再灌流)を行い、再灌流2時間後に心臓を染色、顕微鏡を用いて心筋梗塞サイズを測定した。何も刺激しない虚血再灌流群(コントロール群)と比較すると、APC群・GLP-1群においては心筋梗塞サイズが縮小し、心筋保護作用があることが明らかになった。また、この各群にオートファジー抑制剤(3-メチルアデニン: 3-MA)をAPC刺激・GLP-1刺激前に投与し、同様の虚血再灌流実験を行った結果、コントロール群においては梗塞領域に変化がなかったが、APC刺激による心筋保護作用・GLP-1刺激による心筋保護作用がともに棄却された。これにより、オートファジーのAPC刺激、GLP-1刺激による心筋保護作用に対する影響が明らかとなった。 また、各群のマウスの摘出心をホモジナイズし、タンパク定量を行い、同量のタンパクに対しイムノブロッティング法にて、オートファジーの関連抗体について検討を加えた(LC3-I/LC3-II、Beclin1など)。その結果APC刺激を加えた心臓およびGLP-1刺激を加えた心臓ともにオートファジーが活性化されていることが分かり、オートファジーの誘導が認められた。 これら上記のことより、吸入麻酔薬イソフルラン・GLP-1のプレコンディショニング刺激による心筋保護作用におけるオートファジーの役割が明らかとなった。
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