前回まで検討したTNF-α処理または持続的圧縮応力を負荷した際のMC3T3-E1細胞でのmicroRNA(miRNA)の発現に加え、低酸素状態におけるmiRNA発現をマイクロアレイにて網羅的に解析し、3つのストレスにおけるmiRNAの発現変動を比較・検討した。2つ以上のストレス刺激で変動が認められるmiRNAを比較した結果、TNF-α処理と持続的圧縮応力負荷で5種類、TNF-α処理と低酸素状態で1種類、低酸素状態と持続的圧縮応力負荷で7種類が2倍以上発現変動していた。このうちヒトとマウス間で高度に保存されているものは、miR-146a-5p、miR-210-3p 、miR-1247-3pの3種類であった。miR-146a-5pは前年度確認を行っていたが、新たに持続的圧縮応力と低酸素状態で発現が上昇するmiR-210-3pをRT-qPCRにて同様に変動することが確認することができた。 miR-146a-5pは、前年度において過剰発現させ24時間培養することで細胞増殖に関与すること、標的候補であるTRAF6、IRAK1の発現は変化しないことを確認した。本年度は、まずmiR-146a-5pを過剰発現した際の細胞増殖について更に長時間培養し、比較検討した。72時間まで培養したところ、細胞増殖に差は認められなかった。また、TNF-α処理によりmRNAレベルでTRAF6が上昇し、IRAK1でも上昇傾向を示すことが確認できたため、両者をsiRNAでノックダウンし細胞増殖を測定したが、72時間で有意な差は認められなかった。 これより、miR-146a-5pは細胞増殖初期にのみ影響を与え、標的候補のTRAF6、IRAK1はTNF-α処理で上昇するものの細胞増殖には関与しないことが確認できた。一方、TRAF6、IRAK1をmiR-146a-5pが実際に標的にしていることは確認できなかった。
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