本研究は、静岡育英会なる旧幕臣・静岡県の子弟を対象とした育英事業を分析することで、近現代日本における徳川宗家と旧幕臣、地域社会の関係を明らかにした。 旧幕臣同士の相互扶助のみとして始まった静岡育英会は、明治末期に会の運営が停滞した。そこで、育英会は旧藩主・徳川家達を総裁とし、会務の立て直しを図った。育英会は旧幕臣に限定せず広く静岡地域の子弟まで包摂し、県下に定着する育英事業へと発展した。その後、戦前において花開いた旧藩主と旧藩地域の繋がりは戦後に後退し、育英会は昭和38年に解散するに至ったが、形を変えつつ現在も静岡に密着した育英事業として今に残る。
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