中世イスラーム世界においては、経済的政治的中心地に様々な人々が流入していたことが既に指摘されている。エジプトやシリアといった往時の中心より遠く離れたイエメンの状況を探る本研究では、関連するアラビア語史料を収集・読解し、他地域との共通性あるいは特殊性を見出すことを試みた。 その結果、中世イエメンが対岸の東アフリカより多くの人々を受け入れ、社会における重要な要素として活用していたことを明らかにした。支配者層は東アフリカ由来の家内奴隷や宦官を積極的に活用し、彼らの中には支配体制の高位に登り詰める者も見られた。商人や知識人が行き来していたことも、見逃してはならない。一方で他地域出身者は限られていた。
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