本研究の目的は、気候変動緩和のための多国間技術協力の有効性を分析することである.具体的には、ゲーム理論を用いて、環境技術に関する国際協定がもたらす社会的効果を調査し,協定が効果的に機能する状況・条件を明らかにすることをめざしている. 以上の目的のもと,本年度は2つのプロジェクトを進めた. 第1のプロジェクトでは,技術採択便益(=環境技術を採択することによる環境改善便益)の不確実性が国際技術協定の有効性に与える影響を分析した.具体的には,技術を採択する段階で,(1)技術採択便益に関する正確な情報を知っているケース(不確実性なしケース)と(2)技術採択便益に関する正確な情報を知らないケース(不確実性ありケース)の2つのケースに分けて国際技術協定の提携形成に関する分析を行った.分析の結果,不確実性の存在が国際技術協定の有効性に正の影響を与えることを明らかにした.この結果の背後にあるメカニズムの解明が最大の課題であったが,国内外での学会やセミナー報告を通じて一定の進展を得ることができたと考えている. 第2のプロジェクトでは,技術採択便益のスピルオーバーが技術協定の有効性に与える影響を分析した.その結果,技術採択便益のスピルオーバー度合いが大きくなるほど,社会厚生は大きくなるが,逆に加盟国数は小さくなるということを明らかにし,そのメカニズムを示した.また,研究成果を国内の学会にて報告することで,論文の内容の改訂作業を進めることができたと考えている.
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