本研究「高等教育における国際的接続の『日本的構造』研究―留学生向け予備教育を手掛かりに」では、なぜ日本の大学には付属の語学学校が存在しないのか、という問いを中心に、日本の高等教育の国際化の過程や、今後期待されている飛躍的な国際化のための課題を検証することを目的としていた。平成27年度実績報告書にも記したように、本研究の独自性をより明確にするため、当初の想定よりも国内事例に対する歴史研究的アプローチを軽めにし、理論研究および比較研究により重きを置くアプローチに切り替えた。そのため、平成28年度には、エリート大学へ直結する留学生向け予備教育を大規模に展開するオーストラリアの事例についての資料収集・分析や、高等教育の発展理論の分析枠組みへの取り組み等を特に念頭にして研究を進めた。また、前年度中に収集した資料・文献の整理・分析、国立国会図書館等での追加の資料・文献の収集、関連する研究会等での情報収集等も行った。 研究を進める中で、高等教育機関との関係において、断絶型と直結型という留学生向け予備教育の異なる在り方が明らかになった。断絶型の性格が強い日本では、留学への高いハードルとなる個別入試による選抜への批判から、グローバル・スタンダードのように目される書類審査中心の渡航前入学許可が注目されている。しかし、その参照先であるはずの英語圏の留学生受け入れ大国では、進学先大学と緊密に連携した渡航後の予備教育も大きな役割を果たしており、例えばオーストラリアでは、最も選抜的な大学群が自大学の正規課程と直結する質の高い渡航後の予備教育を、主要な留学生受け入れ経路と言っても全く過言ではない規模で展開してきた。研究成果を整理した論文原稿はほぼ完成しおり、学会発表のエントリー及び学会誌への投稿を待つのみとなっている。
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