研究課題/領域番号 |
15H06473
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松井 鉄平 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10725948)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | 二光子イメージング |
研究実績の概要 |
本研究では、マーモセットにおいて、「高次視覚皮質から一次視覚皮質(V1)」及び「高次視床からV1」の二種類のトップダウン結合の視覚反応特性と、その受け手であるV1機能カラムの視覚反応特性との対応関係を解明する。 初年度は本研究に必要な実験技術の最適化を行った。先ず、神経細胞にGCaMP6sを発現させるAAVのセロタイプは複数を試した。プロモーターは、神経細胞に特異的なSynapsinプロモーター、および非特異的で協力なプロモーターであるCAGプロモーターを使用した。この結果、二光子顕微鏡で複数の細胞がGCaMPを発現していることは確認することができ、いくつかの細胞においては自発発火活動と思われる輝度の変化も観察された。しかしながら、視覚刺激の提示に対する反応を記録することは難しかった。この点については、最近開発されたTETシステムを利用した更に強力な遺伝子発現システムを利用することにより解決されることが期待できる。 二光子イメージングの条件検討をするため、OGB1-AMを使用した二光子イメージング実験を行った。この結果、V2の方位選択性マップを観察することに成功した。二光子イメージングの撮像部位と内因性シグナルイメージングの撮像部位との位置合わせについても成功し、方位選択性マップが両者で合致した結果になることを確認した。更に、CCDカメラを用いた一光子のカルシウムイメージングでも方位選択的な神経集団の活動を捉えることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度においては、AAVを用いたGCaMPの遺伝子導入方法の最適化と、主に二光子カルシウムイメージングにより視覚反応を取得する実験条件の最適化を行った。 AAVを用いた遺伝子導入は、本年度試した組み合わせに関しては著しい結果が得られなかったものの、遺伝子発現が弱い原因が実験手技によるものではなくプロモーターの強さによるものであることを明らかにすることが出来た。また、遺伝子を大脳皮質に注入する実験手技に関しては最適化することができるようになり、遺伝子注入から二光子イメージングの実験を行うまで動物を維持することにも成功した。本年度に開発した最近開発されたTETを利用した強力な遺伝子発現力を持つAAVを用いることで、来年度にはGCaMPによるカルシウムイメージングが問題なく行えるものと考えられる。 機能イメージングに関しては著しい進捗があった。OGB1-AMを用いた二光子カルシウムイメージングによりマーモセットV2で方位選択的なカラム構造を明らかにした。これは、V2での二光子カルシウムイメージングの成功はマーモセット以外も含めた霊長類で世界初の成果だと考えられる。また、内因性シグナルイメージングやCCDカメラを用いた一光子カルシウムイメージングでも方位選択的な神経活動を観察することに成功した。AAVにより大脳皮質の広範囲でGCaMPを発現した個体において、これらの技術を用いることにより、来年度はより大規模なマーモセット視覚野の構造を明らかにできるものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
TETシステムを利用したAAVによりV2やMTの神経細胞にGCaMPを発現させ、皮質-皮質間結合の解析を行う。これに平行して、視床-皮質間結合の解析も行う。公開されているマーモセットの脳アトラス(Yuasa et al., 2010)を参考にして高次視覚視床(Pulvinar)にAAVを注入し、GCaMP6sを発現させる。Pulvinarの神経細胞のうちV1へ投射しているものの活動を、軸索末端における二光子カルシウムイメージングで解析する。PulvinarからV1への軸索末端も、多くが皮質表層に分布するので、二光子イメージングは可能であると考えている。 二光子イメージング直後には、内因性シグナルイメージングで、軸索が分布していた部位におけるV1の機能マップを調べる。この組み合わせが実行可能であることは今年度の成果により既に分かっている。 その後、皮質-皮質間結合の時と同様に、Pulvinarからのトップダウン結合の機能と、それらが分布するV1機能マップとの空間的対応を調べる。4頭(8半球)のマーモセットを使用して視床-皮質間結合の解析を行う。 最後に、皮質-皮質間結合と視床-皮質間結合で、視覚反応特性およびV1機能マップとの関係性に違いが見られるかを検討する。違いが認められる場合は、それが先行研究から予想される2種類の結合の認知的な機能差と関連しているものか検討する。これらの結果をまとめて、国内外の学会や学術論文に報告する。
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