前年度に引き続き、症例の蓄積を行いながら、解析を行った。新たな知見が得られたため、論文執筆、発表を行った。 慢性血栓塞栓性肺高血圧と診断され、当院で肺動脈バルーン形成術 (balloon pulmonary angioplasty: BPA)を受ける患者24名で心臓MRI検査と右心カテーテル検査が遂行できた。右心カテーテルでは肺動脈圧測定、肺血管抵抗の測定を行った。心臓MRIのcine画像を用いて両心室容積の変化を、tagging画像を用いて両心室間の同期不全の評価を行った。BPA後には肺動脈圧、肺血管抵抗は大きく改善していた。また、治療前後で、右心室容積は減少し、左心室拡張末期容積は増加、一回拍出量は増加することがわかった。右心室容積の減少は拡張末期容積、収縮末期容積ともに、肺動脈圧の低下と相関していた。さらに、心室間の同期不全の改善が左心室拡張末期容積や一回拍出量の増加と相関することがわかり、BPAは心室間相互作用を介して、両心室機能に好影響を与えていることが明らかになった。BPAが両心室機能を改善すること、それに心室間同期不全の改善が関係していることを明らかにしたのは、過去に報告がなく、新たな知見と考えられ、Internationl Journal of Cardiovascular Imaging誌に投稿し、受理された(Int J Cardiovasc Imaging (2017: 33; 229-239)。 他にも、共著として、CTEPHにBPAを行うことで両肺動脈血流のエネルギー効率が改善することをMRIを用いて証明し、報告した(European Journal of Radiology 2017:87; 99-104)。また、4D flow imagingを用いて、2D phase contrastと同様にCTEPHにおける肺血流が評価できることも報告した(Radiol Phys Technol. 2016 {Epub ahead of print])。
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