研究課題/領域番号 |
15H06483
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
赤崎 幸穂 九州大学, 大学病院, 助教 (60568963)
|
研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
|
キーワード | 変形性関節症 / アミロイド / transthyretin |
研究実績の概要 |
先行研究において、変性軟骨へのTransthyretin(TTR)性アミロイド沈着を明らかにしており、次に、そのTransthyretinがどこで産生され、もしくは何を介して軟骨に作用するのかを検討した。関節軟骨には血行がなく、関節液の拡散によって栄養されるため、主に肝臓で産生される血清蛋白であるTTRは、関節液を介して軟骨へ作用することが示唆される。人工関節置換術時に変形性関節症患者の関節液を採取し、ヒアルロニダーゼ処理後の希釈サンプルをELISA法にて、関節液内のTTR濃度を測定し、血清濃度20~40mg/dlと比較検討した。その結果、関節液中のTTRの濃度は血清濃度と同定であった。局所産生、すなわち軟骨細胞や滑膜細胞などの関節内の細胞もTTRを産生する可能性があるため、ヒト軟骨細胞および滑膜細胞におけるTTRの発現の有無と炎症性サイトカイン刺激(IL-1βなど)による増強効果をRT-PCRおよびウエスタンブロット法にて解析した。その結果、軟骨細胞、滑膜細胞ともにTTRの発現量は少なく、炎症性サイトカイン刺激でも発現の上昇は認めなかった。以上より、変性軟骨に沈着するTTRは関節液由来であり、血清と同程度であることが明らかとなった。また、wild typeのマウスの肝臓と軟骨組織よりmRNAと蛋白を抽出し、TTRの発現を比較すると、TTRの発現は肝臓のみで認めており、ヒトサンプルと一致する結果であった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
変性軟骨に沈着したTransthyretinの起源の解明について、ヒトとマウスにおいて解析できた。肝臓で産生されるTTRは血清を介して関節内にも同程度の濃度で存在すること、局所産生がないことがヒトとマウスで一致しており、軟骨へ沈着するTTRは関節液由来であることが証明できた。
|
今後の研究の推進方策 |
正常蛋白として血清内にあるTTRと同程度の濃度が関節液中にもあることがわかったため、今後は正常蛋白であるTTRの軟骨沈着メカニズムの解析を行う。軟骨細胞に対してTTRを作用させるin vitroとTTRトランスジェニックマウスを用いたin vivoでの検討を行う。
|