研究課題/領域番号 |
15H06484
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大谷 崇仁 九州大学, 歯学研究科(研究院), 研究員 (80759738)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | オステオカルシン / 脂肪細胞 / ネクロトーシス |
研究実績の概要 |
これまでの研究で5~10ng/mlの低濃度オステオカルシン(OC)は脂肪細胞に作用すると脂肪細胞分化のマスターレギュレーターであるPPARγや糖・脂質代謝活性化ホルモンであるアディポネクチンの発現を促すことを明らかにした。一方、20ng/mlを超える高濃度OCによる長時間刺激は3T3-L1脂肪細胞においてアディポネクチンの発現を著しく抑制することが確認されたため、本研究はそのメカニズムの解明を明らかにすることを目的とした。 研究実施計画に従い、まずは高濃度OC刺激によるOCの受容体とされるGPRC6Aの発現量の変化およびアディポネクチンの発現を促すシグナル伝達経路の確認を行ったが、3~6時間程度の比較的短時間刺激ではGPRC6Aの発現量に変化はなく、アディポネクチンの発現量も低濃度OC刺激と同様に亢進することが明らかとなった。そこで、高濃度OCによる脂肪細胞の細胞死の可能性を考え、細胞数および細胞内シグナル伝達経路の解析を行った。すると、高濃度OCで48時間以上脂肪細胞を刺激すると、形態学的には細胞数の減少と核の肥大化、細胞膜の破綻および脂肪滴の小型化等を確認し、免疫組織学的にはネクローシス時に認められるエチジウムホモダイマーⅢによる核染色を確認した。また、シグナル伝達経路においては高濃度OC刺激によってFoxO1およびFasLの発現量の亢進を認め、細胞死がFasLシグナリングを介していることが示唆された。また、プログラム化されたネクローシスとして知られるネクロトーシスにおいて特異的に活性化することが知られているMixed lineage kinase domain-like protein(MLKL)のリン酸化亢進も確認した。これらの結果から高濃度OCによるアディポネクチンの発現抑制機構はアディポネクチン発現までのシグナル伝達経路そのものに対する影響ではなく、細胞死シグナルの活性化によるものということが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高濃度オステオカルシン(OC)が脂肪細胞に作用すると脂肪細胞数の減少、核の肥大化、細胞膜の破綻、脂肪滴の小型化等の形態学的変化を引き起こし、細胞死シグナルが活性化することを確認した。これらの結果から高濃度OCによる脂肪細胞におけるアディポネクチンの発現抑制機構がGPRC6Aの発現量およびアディポネクチン発現までのシグナル伝達機構に対する直接的な影響ではなく、脂肪細胞に対する細胞死誘導が間接的にアディポネクチンの発現低下を促すことを示唆する結果を得ることができた。以上のことから、当研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で高濃度オステオカルシン(OC)による脂肪細胞におけるアディポネクチンの発現抑制機構が脂肪細胞の細胞死に付随するものであることが示唆されるため、今後はマウス個体に高濃度OCを継続的に投与した時に糖・脂質代謝にどのような影響を与えるのかおよび脂肪組織の組織学的解析を行う方針である。
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