我々は、高濃度のオステオカルシン(OC)が脂肪細胞におけるアディポネクチンの発現を著しく抑制することを確認し、その原因が脂肪細胞への細胞死(ネクロトーシス)誘導であることを明らかにした。本研究では高濃度OCによって脂肪細胞にネクロトーシスが誘導される分子メカニズムについて検討し、以下の点を明らかにした。①高濃度OC刺激によって脂肪細胞におけるFoxO1の発現量と、その標的遺伝子であるFasLの発現量が亢進した。また、そのFasLの局在は高濃度OCによって細胞膜上に変化した。②高濃度OCによる脂肪細胞へのネクロトーシスシグナルはOCの受容体と考えられているGPRC6Aを介した現象であることがsiRNAを用いたサイレンシング実験によって明らかとなった。③高濃度OCによりネクロトーシスのエフェクタータンパクであるmixed lineage kinase domain-like protein(MLKL)のT357/S358がリン酸化され、ホモ三量体が形成された。④高濃度OCによる脂肪細胞へのネクロトーシス誘導はFasL中和抗体によって抑制された。⑤高濃度OCにより脂肪細胞内へのcalcium influxおよびROSの産生が亢進した。⑥ミトコンドリアダイナミクス制御に重要な働きを示すdynamin-related protein 1(DRP1)の活性が高濃度OCによって亢進した。 以上の結果を明らかにし、高濃度OCによる脂肪細胞におけるアディポネクチンの発現抑制メカニズムが脂肪細胞へのネクロトーシス誘導に起因するものであることを明らかにし、そのネクロトーシス誘導の分子メカニズムの一端を解明した。
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