研究課題
本年度は、ダウン症候群患者において合併率が高い睡眠呼吸障害の早期発見法を検討した。睡眠呼吸障害の早期発見は、循環器疾患発症・増悪予防への有効な介入法である。その第一段階として、慢性心不全患者における、睡眠呼吸障害の心血管系への悪影響を評価する指標について検討した。本年度は、23名の慢性心不全患者に対して、睡眠呼吸障害の重症度を評価できる終夜睡眠ポリグラフィーと心血管系への悪影響として血管内皮機能を評価できる血流依存性血管拡張反応検査を実施した。また、我々が以前、開発した睡眠呼吸障害の低酸素血症の蓄積を反映する指標及び従来用いられている睡眠呼吸障害の重症度を反映する指標と血管内皮機能との関連を検討した。結果、以前我々が、健常者を対象とした研究と同様に睡眠呼吸障害による低酸素の蓄積を反映する指標は、有意に血管内皮機能障害と関連していた。一方、従来の睡眠呼吸障害の重症度に関連する指標は、血管内皮機能障害と関連していなかった。しかし、本年度のデータ解析は、交絡因子の補正が不十分であり、血液データや合併症の有無などで補正したうえで再解析をする必要がある。翌年度は、交絡因子を十分に補正したうえで論文執筆に移る必要がある。本年度のデータ解析により、睡眠中の酸素飽和度をモニターし、低酸素血症の積分値を評価することの重要性が示唆された。また、看護師による睡眠呼吸障害が起因する循環器疾患の増悪予防に寄与できる可能性が部分的であるが示唆され、ダウン症候群患者においても睡眠中の低酸素血症に着目する介入は心疾患の増悪予防に有効である可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
現在までに、慢性心不全23名の終夜睡眠ポリソムノグラフィーと血管内皮機能に関するデータを取ることができており、予定通りである。また、国際学会にてその結果を発表できるなど一定の成果をあげている。また、論文執筆の前段階まで来ていると判断されるため
今後は、詳細な血液データや患者背景などを加味した解析を行い、交絡因子を補正した上での評価が必要となる。さらに、論文執筆・投稿をし、その成果を発信することも必要となる。次年度は、上記した問題点を解決し、論文を仕上げる予定とする。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件)
Current Hypertension Review
巻: 12 (1) ページ: 12-17
10.2174/1573402112666160114093307