研究課題
細胞内へのカルシウム流入は、癌の発生や進展・転移過程において非常に重要な役割を担う。TRP(transient receptor potential)チャネルは高いカルシウム透過性を有し、その活性化により細胞の増殖・分化・細胞死など多様な生理応答を調節する。近年、TRPチャネル活性化が、がん細胞の機能制御に関与することが報告されている。しかしながら、口腔癌の病態発生や浸潤・転移機構におけるTRPチャネルを介した機能調節は明らかにされていない。本研究では、TRPチャネルが口腔扁平上皮癌の発生および悪性化に与える影響を解析し、本チャネルをターゲットとした口腔癌の新しい診断および治療法の開発を目的とする。本年度はまず悪性度および分化度の異なる複数の口腔癌細胞株(OSCC)を用い、温度感受性TRPチャネル群の発現をmRNAおよびタンパク質レベルで調べた。細胞株を選定後、Caイメージング法にて機能的なTRPチャネルの発現を確認した。選定した細胞株に熱刺激やTRPV1、TRPV2、TRPV3、TRPV4をターゲットとしたアゴニスト刺激を加えると、上皮成長因子受容体や各シグナル伝達経路(ERK-MAPK、PI3-Akt、p38、JNK)において、刺激に応じたリン酸化が確認された。
2: おおむね順調に進展している
本年度は学部の耐震改修工事に伴い、実験施設の使用に関して物理的・時間的制約が多かった。そのため当初予定していた一部の解析が未完了であるが、本年度計画した研究内容は概ね遂行できた。また、次年度に予定している実験の予備検討(実験系の構築、試薬の条件検討)をすすめた。以上より本年度の研究はおおむね順調に進展していると判断した。
今年度選定した細胞を用いて、当初予定していた解析をすすめていく。また、今年度予定していた未完了の実験も併行して行っておく。siRNAによる機能的knockdownは今年度に実験系を構築しており、次年度にスムーズに移行できると考える。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
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