研究課題/領域番号 |
15H06499
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
河合 孝尚 長崎大学, 研究推進戦略本部, 戦略職員 (40570792)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | アンチパターン / 消費情報量 / 不正行動 / 研究不正 |
研究実績の概要 |
本研究は、様々な業種でアンチパターンを早期発見し対処する能力の育成に関する教育事例を調査し、調査結果を分析し、能力を向上させるための教育要素を特定し、特定した教育要素を取り入れた教育プログラムを開発し教育実践研究を行う。そして教育効果についての定量的評価分析を行い、開発した教育プログラムのビルド&スクラップを繰り返し行うことで、学術活動における科学者への新たなコンプライアンス教育プログラムを開発することを目的としている。 27年度では、研究実施計画どおりに警察官や消防士等の危機察知能力の高い業種での“ある事態に対するリスク(アンチパターン)を早期発見し対処する能力”に関する教育事例調査(ヒアリング調査)を行った。ヒアリング調査結果を比較したところ、経験者による講義や体験談等が受講者のアンチパターン能力の向上に有効であるという共通点が見つかった。次に、認知心理学における「時間知覚(体感時間)」と「未知情報量」に関する先行研究結果を基に、受講者の消費情報量(認知した情報量)を求める計算式『I=単位情報量×受講者の感覚(情報の新規率/時間知覚)』を考案し、各講義での教育効果について計算している。現在のところ、まだ教育事例調査でのデータ数が少なく、求めた数値の精度に欠けるので、引き続き教育事例調査を続行しデータを集め、考案した計算式を改良し精度を上げることが必要であると考えている。又、「科学者の不正行動に関する研究会」を自ら発足し、3月初旬に東京と静岡にて第1回キックオフミーティングを開催し、倫理教育や研究不正など関係する研究者を集めての意見交換等を行った。引き続き本研究に関する普及活動を行い、日本におけるResearch Integrity研究分野の確立を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
27年度では、研究実施計画どおりに警視庁(警察官)、消防署(消防士)、国立感染研究所(教育担当者)へのコンプライアンス教育に関する教育事例調査(ヒアリング調査)を行い、使用しているツールや教育方法、受講人数、講義時間等に関するデータを収集した。収集したデータを元に、受講者の消費情報量『I=単位情報量×受講者の感覚(情報の新規率/時間知覚)』で各講義での教育効果について計算しているところだが、まだ教育事例調査でのサンプル数が少なく、計算した消費情報量での教育効果についての定量的評価分析するまでに至ってないので、引き続き教育事例調査を続行しデータを集め、考案した計算式を改良し精度を上げることが必要であると考えている。 又、「科学者の不正行動に関する研究会」を自ら発足し、3月初旬に東京と静岡にて第1回キックオフミーティングを開催し、倫理教育や研究不正など関係する研究者を集めての意見交換等を行った。日本にはResearch Integrityに関する研究が行われておらず、研究不正等が多発している現状で、科学者が行う研究活動等に関する不正行動について研究されていないことは由々しき問題である。学術研究機関のコンプライアンス教育担当者に本研究成果を活用してもらうことで、研究不正や研究費不正等の科学者の不正行動を抑止することが重要かつ急務であると考えており、引き続き関係する研究者で不正行動に関する意見交換等を行い、日本におけるResearch Integrity研究分野の確立を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
28年度は、特定した教育要素を取り入れた科学者のためのコンプライアンス教育プログラムを開発し、科学者等の関係者に対して教育実践研究を行うことを計画している。コンプライアンス教育の実践場所としては、研究協力者である九州大学、徳島大学のコンプライアンス担当者と協力し進めることで効率的に教育実践研究等を行う。又、長崎大学の大学教育イノベーションセンターとも連携し、学生や事務職員等、学内での教育実践研究も行う予定である。教育対象は学術活動に携わる研究者、技術者、学生、事務担当者等とし、教育手法としては、法令や対処例等を学ぶ知識教育の他に、ロールプレイ訓練やグループディスカッション等の自身で問題解決を行うアクティブラーニング手法を組み入れることで、各個人の“ある事態に対するリスク(アンチパターン)を早期発見し対処する能力”を向上させる。そして教育プログラムの実施後、参加者に他業種の教育事例調査で行ったものと同様のアンケート調査を実施し、開発したプログラムの教育効果についての定量的評価分析を行う。この分析結果に基づいて、開発した教育プログラムのビルド&スクラップを繰り返し行い改善していくことで、より教育効果の高い教育プログラムを開発する。これにより“ある事態に対するリスク(アンチパターン)を早期発見し対処する能力”を向上させるのに効果的な教育プログラムを開発することができ、本研究成果を科学者等への新たなコンプライアンス教育の方法として提案することで、科学者に対する社会からの信頼回復に貢献することを考えている。
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