研究実績の概要 |
小児のう蝕は成人のそれと比較すると,急速かつ深部へ進行する穿通性う蝕であるのが特徴である.また,乳歯のエナメル質や象牙質の厚みが永久歯の半分程度であったり,乳歯や幼若永久歯の石灰化度が,成熟した永久歯より低かったりする形態的特徴が要因で,炎症は歯髄や根尖部周囲組織へ波及する.この際,口腔内では歯肉の腫脹として臨床上観察されることが多い. 炎症が波及する際,強い臨床症状を伴う感染根管内や根尖病巣部より分離されるのが, Porphyromonas endodontalisである. 我々は,糖非発酵性であり同属のPorphyromonas gingivalisのようなジンジパイン活性も持たないP. endodontalisが,如何にしてエネルギー源を獲得しているか探索し,細胞外ペプチドを分解してジペプチドを産生するジペプチジルペプチダーゼ(DPP)活性を持つことに着目した.そこでPeDPP5とPeDPP7を新規に同定すると共に、同菌の病原性にはこの我々が発見したPeDPPsが寄与している可能性を見出した.P. gingivalis及びP. endodontalisにおいては,細胞内局在予測プログラムPSORTb ver 3.0.2による解析で, 基質特異性の異なる4種類のDPPsの局在は特定されなかったが,本研究期間中にP. gingivalisにおいてはDPP4, 5, 7, 11がペリプラズム画分に存在していることを見出した.P. endodontalisにおいてもオリゴペプチドがペリプラズム画分に移行した後,同画分においてエキソペプチダーゼ群によってジペプチドに分解され,菌体内に取り込まれる可能性が示唆された.本研究の今後の発展により,同菌の病原性に関与すると推測されるジペクチド分解系の全容解明及びその阻害経路確立が期待される.
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