研究課題
H27年度においての課題であった、チオール化合物とβラクタム系抗生物質の反応産物の単離、同定に関して、アンピシリンとメロペネムのシステインアダクトをHPLCにて分離、精製を行い標準物質を得ることが出来た。また、それらの標準物質を用いて、pH、温度、時間などの条件下での安定性を決定した。さらに、親電子物質との反応性も検定し、その化学的特性を決定した。核磁気共鳴による構造解析もH27年度に予定していたが、使用予定の機器の都合によりH28年度に持ち越しする。構造解析に必要な標準物質の精製法は確立されており、機器の準備が出来次第、いつでも解析を行える状況にある。βラクタム系抗生物質以外の抗生物質とシステインとの反応性を検定したところ、アミノグリコシド系、マクロライド系、テトラサイクリン系などの抗生物質においてはシステインとの反応性を持たないことが分かった。このことから、当初の予想の通り、βラクタム系抗生物質特異的な構造であるβラクタム環がシステインとの反応に重要であると考えられる。βラクタム系抗生物質のシステインアダクトの生物学的特性に関しては、その細胞毒性活性や抗菌活性を検定したところ、いずれの活性も持たないことが分かった。抗菌活性が失われているということは、βラクタム系抗生物質の抗菌活性に重要なβラクタム環がシステインと反応していることを意味しており、今までの結果と矛盾しない。βラクタム系抗生物質とシステインの反応部位については構造解析を行うことにより明らかになると期待される。
2: おおむね順調に進展している
H27年度の課題であったチオール化合物とβラクタム系抗生物質の反応産物の単離、同定に関して、当初の予定通り標準物質の精製まで完了している。また、それらを使い化学的特性と生物学特性を決定した。反応産物の構造解析に関しては、使用予定の機器の都合によりH28年度に持ち越しすが、構造解析に必要な標準物質の精製法は確立されており、さらに標準物質の大量精製も終了しているため、機器の準備が出来次第、いつでも解析を行える状況にある。以上のことから、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
H28年度は、H27年度からの繰越課題であるチオール化合物とβラクタム系抗生物質の反応産物の構造解析を行う。また、当初の予定の通り、抗生物質を処理した細菌からの反応産物の同定を試みる。また、同時に抗生物質耐性に影響を及ぼすことが分かっている遺伝子欠損大腸菌について反応産物の同定、定量することにより、抗生物質耐性とアダクト形成との関連性を明らかにする。
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