研究実績の概要 |
聴覚と平衡覚を司る感覚器である内耳の形成に重要な役割を持つことが示唆されているDachshund Family Transcription Factor 1(Dach1)遺伝子に着目し、マウス胎生期における内耳形成のメカニズムの一端を明らかにすることを目指した。 胎生期内耳(耳胞)へDach1を標的とするshort hairpin RNA(shRNA)プラスミドを導入し、内耳特異的Dach1遺伝子発現抑制モデルマウスの作成に成功した。本マウスの胎生期15日目(E15)、E18の頭部を摘出し、凍結切片を作成し、in situ hybridazationを用いてDach1発現を確認したところ、Dach1の消失を認めた。さらに、E15の蝸牛凍結切片において、Dach1遺伝子に関連すると予想され、蝸牛血管条形成に強く影響を与えると考えられるPax6, Igf1遺伝子の発現の減少を認めた。 また、本マウスの成熟期の蝸牛凍結切片では、野生型マウスと比較して蝸牛血管条が菲薄化していることが明らかとなった。 Dach1欠失マウスは胎生致死(Davis, Mol Cell Biol 2001)であり、これまでDach1遺伝子の内耳発生における働きは行われることなく全く持って不明であったが、その役割の一部について明らかにすることができた。今後、Dach1遺伝子と関連する遺伝子について、その分子生物学的な解析を免疫沈降法やReal time RT-PCRを用いて進める必要がある。
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