近年の地球温暖化による影響の一つとして、熱帯生物の分布拡大が懸念されている。本研究では熱帯性の小型甲殻類のカイアシ類に注目し、有害種が今後日本で水産被害をおこすことを想定し、侵入時期等の予測や予防を実施するため基礎的な知見の集積を目的に実施した。具体的には主として黒潮流域の南西諸島から鹿児島本土と、更に上流にあたるパラオ周辺海域、その東方のミクロネシア連邦チューク諸島で寄生性カイアシ類相調査と分類研究を実施した。その結果、未記載属2種と少なくとも未記載種8種を含む70を超える種が発見された。現状理解されている寄生性カイアシ類の基礎的な知見は、極めて希薄であることがより強調される結果となった。
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