研究課題/領域番号 |
15H06523
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研究機関 | 札幌市立大学 |
研究代表者 |
望月 由美子 札幌市立大学, デザイン学部, 専門研究員 (10759046)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | 美術史 / ゴンザーガ家 / サッビオネータ / スペイン・ハプスブルク家 / ヴェスパシアーノ・ゴンザーガ / 肖像美術 / アントニス・モル / レオーネ・レオーニ |
研究実績の概要 |
本研究は、北イタリア半島がスペイン・ハプスブルク家の支配下に置かれる16世紀後半、封建支配に降ったイタリア諸公が、宗主国スペインの政治文化路線と結びつきつつ、いかなる君主像を創り上げたのか明らかにすることを目的とする。具体的には、フェリペ二世の忠臣でハプスブルク家の皇帝たちとも生涯密接に関りをもった、北イタリアのサッビオネータ公爵ヴェスパシアーノ・ゴンザーガの肖像を分析対象とし、スペイン宮廷周辺で制作された肖像美術との影響関係を鑑みつつ考察する。 初年度の研究実績は、1)文献学的調査:ローマ、フィエンツェ、マントヴァ、ミラノ、マドリードの図書館にて予定通り、同時代伝記作家A.リッシャ(1592)、C.ファロルディ(1592頃)によるヴェスパシアーノの伝記、16世紀末のサッビオネータの出来事を年代記的に綴ったN.ドンディの日記、サッビオネータ市の古文書館史料(現存せず)を参照したI.アッフォ(1780)の伝記を入手し、サッビオネータと西欧他宮廷との政治的文化的ネットワークを検証中である。更に米国カンザス大学スペンサー・リサーチ図書館で発見されたサッビオネータ関連の古文書コピーも予定外に入手でき、ヴェスパシアーノの都市建設に関与した地元公人、クレモナ出身の画家カンピの活躍について一次史料による確認ができた。またボッツォロのゴンザーガ家傍系子弟の書簡から、本家と傍系でハプスブルク家への奉仕の違いがあり、傍系ゆえの軍事的生き残り方が浮彫りとなった。2)作品調査:科研費で購入した一眼レフカメラを用い、アンブラス城所蔵のハプスブルク家、ゴンザーガ家の関連肖像画の撮影を行った。コモ市立絵画館の協力でアントニス・モル作品の高画質図版も入手した。プラド美術館、エル・エスコリアル修道院は撮影不可で、論文掲載等で具体的に必要な図版が確定し次第、担当部署に図版購入依頼することで打合わせを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究活動スタート支援補助金期間の初年度が、他の科研費と異なり年半で終わることを考慮に入れず研究計画を設定してしまったため、分析作業にやや遅れが生じているが、これについては、二年次の平成28年度の前半で口頭発表による成果報告を行うなどして、調整する予定である。具体的には、7月2日開催予定のルネサンス研究会において、ハプスブルク家の宮廷肖像画家アントニス・モル作《ヴェスパシアーノ・ゴンザーガの肖像》の図像分析に関する知見を発表する予定でいる。図版資料の収集・整理については、初年度に二年度の計画の一部を前倒し的に進めていることもあり、計画全体としては予定通りに進めることのできる状況にある。また、査読付き紀要雑誌の掲載が1本確定しており、新たな研究成果を発表する準備も進めている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、平成27年度で収集した文献資料の精読を進める一方、2016年9月および2017年3月の二度、イタリアを中心とする現地調査を行い、以下の計画を進める予定である。 1)図版資料収集:マントヴァ・クレモナ・ブレーシャ県文化財監督局、サッビオネータ市観光協会の協力を得て、サッビオネータ市の聖母戴冠聖堂内にある彫刻家レオーネ・レオーニ作《ヴェスパシアーノ・ゴンザーガ》、サッビオネータの工人アルベルト・カヴァッリ(推定)によるドゥカーレ宮殿「祖先の回廊(ギャラリー)」の歴代ゴンザーガ家当主およびその妻たちの夫妻肖像レリーフ彫像、マントヴァのドゥカーレ宮殿所蔵作品でヴェネツィア出身彫刻家(作者不詳)作の大理石胸像《ヴェスパシアーノ・ゴンザーガ》の写真撮影を行い、本研究に必要な図版資料データを完成させる。2)作品調査・分析作業:昨年から進めているレオーネ・レオーニの作品分析に当たり、ハプスブルク家と同盟宮廷のイタリア君主ジャン・ジャコモ・メディチ、フェッランテ・ゴンザーガ等のために同作家が手掛けた肖像彫刻を比較対象に据えつつ、分析結果をまとめる。一方、「祖先の回廊」の作品群に関しては、宮殿内のスペースを利用して一族の始祖から同時代までの歴史を一望できる16~17世紀に隆盛した肖像ギャラリーの興味深い作例の一つであることから、これに類するメディチ家、ハプスブルク家での作例との比較分析を通じ、王朝の歴史を語る肖像機能の一例として、その文化的意義も踏まえて調査内容をまとめる。3)以上、昨年度からの研究に基づいて得られた分析結果については、適宜、発表していく。
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