本研究は、長期記憶過程の代表的なパラメトリック・モデルであるautoregressive fractionally integrated moving average(ARFIMA)モデルに従う観測された時系列データに欠損値(欠測値)がある場合のパラメータの推定問題について、ウェーブレット解析を用いた近似最尤推定法の研究と、その推定量の統計的性質を明らかにすること、欠損値を無視して時系列データをつなげた場合に推定を行った際の推定結果への影響などを目的として実施された。また上記の目的に付随して、観測したデータに欠損値がある場合の統計的推定手法およびウェーブレット解析を利用した長期記憶過程の推定手法に関しても研究を行った。
理論的な結果として、データの値に依存しないで完全にランダムにデータが欠損するメカニズムの場合、ウェーブレット変換をして欠損の影響を受けていない係数のみをホワイトノイズに従う系列であると近似することで最尤推定を行った際に、欠損値がない場合と同様に推定できることを示した。このため統計量の性質としては、欠損値がない場合の既存の研究結果をそのまま適用できることが判明した。また、数値実験により理論的な結果を確認した。
これらの研究成果を金沢大学で開催された2016年度統計関連学会連合大会にて報告を行った。さらに、その際に参加者から関連する研究についての情報提供やアドバイスがあったため、それらの関連研究の内容の確認とそれに伴う本研究で提案した手法の拡張可能性についても研究を行った。
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