本研究の目的は、地域社会の人びとが自発的に土地の所有権を制限する社会的条件を明らかにすることであった。二つの事例研究から、その社会的条件とは地域コミュニティの秩序回復であったことが明らかになった。事例によって問題となる秩序は異なるが、地域内の事情を理解している地域コミュニティ成員は、地域内の格差問題を是正したり、人間関係の崩壊を免れるために、自発的に所有権を制限する側面を有している。 この点を理解しなければ、所有権の開放を求める自然環境保全活動は、地元の執拗な反対運動にあうことにもなろう。地域住民と行政、環境ボランティアらの協力関係の構築にはこうした地元の論理に対する理解が不可欠といえる。
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