研究実績の概要 |
大腸菌やサルモネラなど腸内細菌科細菌において、グリシンによって誘導されるsmall RNA GcvBはアミノ酸代謝、輸送、転写制御に関与する複数のmRNAを転写後レベルで包括的に制御する。GcvBの細胞内存在量は新生転写量と分解速度によって決定される。GcvBの合成はグリシン応答性転写制御因子GcvA/GcvRによって誘導される一方、GcvBはグルタミン酸・アスパラギン酸ABCトランスポーターmRNAから生成するsmall RNA SroCと塩基対形成することでRNase Eによる分解が促進される (Miyakoshi et al., 2015)。今年度、GcvBを人為的に過剰発現させるとサルモネラと大腸菌の生育が著しく遅延することを明らかにした。また、SroC破壊株ではGcvB細胞内存在量が上昇し、GcvBによる生育阻害がより強くなることが示された。グリセロールを炭素源、アンモニアを窒素源とするM9最少培地でもGcvBによる生育阻害が見られたことから、GcvBによるアミノ酸生合成の抑制が生育阻害の要因であることが推測された。実際に上記の培地にアミノ酸を添加することで部分的に生育が回復することが明らかになった。 Masatoshi Miyakoshi, Yanjie Chao, Joerg Vogel (2015) Cross talk between ABC transporter mRNAs via a target mRNA-derived sponge of the GcvB small RNA. EMBO J. 34:1478-1492.
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