研究課題/領域番号 |
15H06530
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
瀬戸川 将 福島県立医科大学, 医学部, その他 (30760508)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | 大脳基底核 / 身体教育学 / スポーツ科学 / 知覚-運動学習 / 線条体 |
研究実績の概要 |
体育・スポーツにおいて“動作”を熟達するためには,外部からの感覚情報に対して適切に体を動かせるようになる必要がある.このような学習の達成には,大脳基底核の中心的な構造である線条体が深く関与している.近年,この知覚-運動学習の熟達段階に応じて,線条体内の学習関連領域が遷移することが報告されている.しかし,この学習過程依存的に生じる脳領域の遷移に関しては未だ不明な点が多い.そこで本研究では,知覚-運動学習の過程に伴い線条体内で生じる可塑的変化を薬理学的・組織科学的に明らかにすることを目的とした. 本研究では,知覚―運動学習課題として聴覚弁別課題を用いる.従来用いられてきた聴覚弁別課題は,学習達成まで1月以上の期間が必要であり,弁別学習獲得までのパフォーマンスのばらつきも大きい.そそこで課題中の音刺激のタイミング,刺激時間,報酬の呈示方法や課題時間を微調整することにより,従来の聴覚弁別課題よりも短期間で,なおかつ安定したパフォーマンスの下で弁別学習が可能な実験プロトコルを確立した.また,今回作成した聴覚弁別課題は様々な神経科学的実験手法を導入しやすいことから,今後,本研究をより発展させるために貢献するだろう.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
行動神経科学の分野において,個体差により生じる行動の“ばらつき”は安定したデータを取得することを妨げるだけでなく,実験の進行や実験により得られたデータの解釈を困難にする.そのため,本研究を進めるにあたって,従来の聴覚弁別課題に比べて安定したパフォーマンスを示し,素早く学習を達成することが可能な実験プロトコルを確立することは,今後の実験を進める上で必須であった.平成27年度は,個体間のパフォーマンスの“ばらつき”が少なく,より短期間で弁別学習を獲得する聴覚弁別課題の実験プロトコルを確立した.当初の予定に比べて,実験プロトコルの確立に時間がかかってしまい計画の変更を必要としたが,実験開始当初に想定していた実験プロトコルよりも遥かに短い期間で学習を達成可能な課題を確立することが出来た.これは,今後,知覚-運動学習に伴う線条体の領域内で生じる可塑的変化を明らかにするために大きく寄与するだろう.
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今後の研究の推進方策 |
げっ歯類の線条体は,脳内でも最も大きな神経核の一つである.また,これまで線条体内で生じる学習課題関連領域の遷移は,実験に用いる学習課題に応じて異なる結果が報告されている.そこで,局所性の高い電気生理学的手法を取り入れる前に,知覚―運動学習に応じて線条体内の関連領域がどのように変化していくのかを検討することは重要である.平成28年度は学習段階別に線条体に薬理学的破壊局所破壊を行い,学習段階に応じて線条体内の課題関連領域がどのように遷移するかを検討する.また免疫組織科学的手法により神経活動依存的に発現する最初期遺伝子の一つであるc-fosを線条体内の複数の下位領域において定量化することにより,学習段階に応じて線条体内の課題関連領域がどのように変化するか検討することも予定している.
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