研究課題
体育・スポーツにおいて“動作”を熟達するためには,外部からの感覚情報に対して適切に体を動かせることが重要である.このような学習の達成には,大脳基底核の中心的な構造である線条体が深く関与している.近年,この知覚-運動学習の熟達段階に応じて,線条体内の学習関連領域が遷移することが報告されている.しかし,この学習依存的に生じる脳領域の遷移に関しては未だ不明な点が多い.そこで本研究では,組織科学的手法および脳機能イメージング法を用いて,知覚-運動学習の過程にて線条体内で生じる可塑的変化の動態を明らかにすることを目的とした.平成28年度は,前年度に確立した聴覚弁別課題をもとに実験を行った.本実験では,弁別課題の獲得に伴う課題関連領域を同定するために,神経活動の分子マーカーであるc-fosの発現の確認,および陽電子放射断層撮像装置(PET)を用いた小動物脳機能イメージング法を用いた.PETによる神経活動の評価には,2-deoxy-2-[18F]fluoro-D-glucose(18FDG)を用いた.18FDGは,神経活動に伴いグルコーストランスポーターを介して神経細胞内に取り込まれ,細胞内に蓄積する.PETによる脳機能イメージング法では, 18FDGの集積した位置を計測することにより、課題遂行時に関連する脳領域を特定する.PETの撮像は,学習実験開始前および学習実験時に計5回行った.本実験では,背側線条体にてc-fosの発現が確認された.またPET実験の結果,学習の初期段階において背側線条体の神経活動が増加した.一方で,学習の後半では視床の神経活動が学習初期と比較して低下する事が明らかとなった.本研究成果は,知覚―運動学習の進行に伴う全脳の神経ネットワークレベルで生じる可塑的変化のメカニズム解明に繋がることが期待される.
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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