研究課題/領域番号 |
15H06544
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
秦 憲志 滋賀県立大学, 地域共生センター, 専門調査研究員 (50760815)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | 条里地割 / 集落形成 / 生産空間 / 空間構造 / 空間管理 / 農村計画 / 都市計画 |
研究実績の概要 |
本研究は、条里地割が色濃く残る滋賀県野洲川下流域、旧栗太郡北東部地域を対象として、農地・ほ場域を軸にしながら明治大正期の資料分析と現地調査により集落の空間構造をモデル化することを目的とする。また、他の条里地割分布地域との比較研究を行い、モデルの検証を行う。さらに、農村集落が抱える今日的課題を踏まえ、地域空間を良好に維持・管理していく方策を探ることを目的としている。これら目的を達成するため、以下の取組みを行った。 1.旧栗太郡北東部地域での集落調査:比較的多くの農地が残っている「北中小路」、「出庭」の2集落を選定し、現在の農地の利用・耕作実態を明らかにするとともに、地域の開発動向や農地整備・集落空間の変遷を把握した。なお「出庭」は、「出庭本郷」、「出庭中」、「出庭宅屋」の3つの地区から成る大規模集落であり、「出庭中」については、煉瓦工場の原料供給と併せて独自のやり方でほ場整備事業が行われ、20m×50mの一反区画の条里地割が踏襲されていること、また「出庭宅屋」については、明治期以降、農地の形状が変わっておらず、地域開発の痕跡を示す事物の存在が明らかとなった。 2.滋賀県内における比較対象地域選定のための調査:東近江市能登川町、愛荘町、彦根市、長浜市高月町等、滋賀県東北部地域において、条里地割が色濃く残る集落の地籍図等の資料収集を行った。 3.滋賀県外における比較対象地域の調査:全域の条里復原図がある福井県において予備調査を行い、ほ場整備が未実施で条里地割の形態をよく引継いでいる地域として越前市国高地区を選定し、「江ノ西土地改良区」と「龍ヶ淵土地改良区」の受益エリアを対象として、農地と耕作者の近年の変化の実態を明らかにした。過去25年ぐらいの農地転用の実態を把握し、宅地化と守られている農地の特色を明らかにするとともに、構成組合員の変化の状況を把握した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究がスタートし、2集落の事前調査を行った結果、A集落では農地転用による宅地開発等の事業が進行しており、調査方法の見直しが必要になった。B集落については3つの地区からなる大規模集落であるため、それぞれの地区に対して自治会や関係者等との調査協力体制づくりが必要となり、地元調整や資料収集に時間を要し、資料分析と調査結果のとりまとめが遅れている。 比較研究においても、滋賀県内において比較対象集落を選定するため、資料収集を行ったが、文献資料だけでは検証作業を進めることが難しく、農地の場所性や変遷を踏まえた上での分析が不可欠であると判断し、比較対象を再検討し、比較研究をやり直す必要が生じた。このため、全域の条里復原図がある福井県において予備調査を行った結果、越前市において、ほ場整備が未実施で古来からの条里地割の形態をよく引き継いでいる地域があることが判明し、越前市にて地域調査を進めることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
農地・ほ場域を軸にした集落の空間構造のモデル化に関して、明治期以降、まとまった農地整備が行われておらず条里地割の形態をよく伝えている旧栗太郡北東部地域の2集落について、現在の土地利用と耕作者(所有者)のデータを基に居住地と農地の関係性を分析する。次に土地台帳等の資料調査により可能な限り時代を遡り、農地利用(所有)の基本構造を明らかにする。また、把握できる地域開発事象等により、条里地割を踏襲する集落整備のプロセスや意味を考察する。 対象とする地域は開発ポテンシャルの高い地域であるため、開発動向や地域の実情を踏まえ、今後の良好な地域空間管理の方策について、関係者とともに共有できる地域目標を探る。 比較研究に関しては、都市化の進行とともに変化している部分と維持されている部分の空間的特質や社会環境を踏まえ、条里地割を踏襲する集落における、農地・ほ場と居住域の関係性を考察し、より普遍的な空間構造モデルを探究する。 以上のことを通して、生産空間を中心とした集落形成のしくみや空間管理のあり方について新たな知見を得る。
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