本研究は、条里地割が色濃く残る滋賀県野洲川下流域、旧栗太郡北東部地域を対象として、農地・ほ場域を軸にしながら明治大正期の資料分析と現地調査により、集落の空間構造をモデル化することを目的とする。また、他の条里地割分布地域との比較研究を行い、モデルの検証を行う。さらに、農村集落が抱える今日的課題を踏まえ、地域空間を良好に維持・管理していく方策を探ることを目的とする。これらの目的を達成するため、以下の取組を行った。 1.旧栗太郡北東部地域での集落調査:前年度調査を実施した2集落(北中小路と出庭宅屋)について、土地台帳調査を行うととともに明治期の地籍図調査を行い、空間特性の共通性を把握した。また、農地の変遷について把握するとともに、営農状況と今後の展望、空間管理の実態等についてヒアリング調査を行い、歴史的に形成されてきた価値ある集落環境を未来に継承していく課題を明らかにした。 2.滋賀県外における比較対象地域の調査:越前市国高地区の「江ノ西土地改良区」及び「龍ヶ淵土地改良区」の受益エリアを対象として、地域管理の実態把握と農地転用の調査、明治期の地籍図調査、土地改良区役員を対象とした「国高地区における農業と地域空間管理(地域づくり)に関するアンケート」調査と一部ヒアリング調査、江ノ西土地改良区の稲寄町と瓜生町の土地台帳調査を実施した。これらの結果、稲寄村と瓜生村の明治期の集落の姿を復原するとともに、条里地割の形態が引き継がれてきている要因や近年の開発実態の特色を明らかにした。また今後の農地保全や地域空間管理の課題を明らかにした。
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