本研究は、契約法において広く用いられている任意法規という規制手法の基礎理論的考察を行うものである。特に、社会的厚生という規範的観点に立脚して任意法規の機能分析を行った。任意法規は(1)契約締結・遂行における取引費用の削減、(2)当事者間の対称情報の実現、(3)意思決定の合理的な方向づけ、という観点から社会的厚生の増大を実現するものである。そして、このような観点からは、任意法規は一方で当事者の仮定的意思を契約に補充することによって当事者自身による契約締結を促進し、他方で、一定の場合には当事者の意思決定の指針たるべき場合があるというアンビバレントな結論を、統一的に正当化可能であることを示した。
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