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2015 年度 実績報告書

肝癌の発生・進展における多機能分子p62の役割

研究課題

研究課題/領域番号 15H06547
研究機関京都府立医科大学

研究代表者

楳村 敦詩  京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30759585)

研究期間 (年度) 2015-08-28 – 2017-03-31
キーワード肝癌 / 肝細胞癌
研究実績の概要

本研究は、様々な肝疾患で蓄積が認められる多機能分子、p62/SQSTM1(sequestosome-1, 以下p62)が、肝癌の発生・進展にどのように働くかを検討する事を目的としている。
まず①Diethylnitrosamine (DEN)誘発肝癌モデルを用いた。肝臓特異的p62欠損マウスに投与することでDENによる肝発癌におけるp62の役割を検討できる。生後2週齢のp62を欠失したマウス(p62 flox/flox; Alb-Cre陽性)およびそのコントロールマウス(p62 flox/flox; Alb-Cre陰性)に化学発癌物質DENを腹腔内投与し、8-10カ月令にて肝癌の発症を比較検討した。その結果、p62欠損マウスにおいてコントロールマウスに比してその発生が抑制されることが確認できた。
次に、②肝臓特異的TSC1(tuberous sclerosis 1)欠損マウスを使用した。このマウスではmTORC1(mammalian target of rapamycin complex 1)活性が恒常的に過剰に活性化した状態となる。
肝臓特異的TSC1欠損マウスはmTORC1の恒常的活性化により、慢性肝障害を経て10-12カ月令で肝癌が自然発生し、肝臓の癌部および非癌部の両方においてp62が過剰発現し、蓄積していた。そこで、このTSC1欠損マウスとp62欠損マウスを交配することで肝臓特異的TSC1/p62欠損マウスを作成し、TSC1欠損マウスに発生する肝癌の発生・進展に対するp62欠損の影響を検討する。このマウスはほぼ作成できた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成27年度では、p62を直接欠損させることにより肝癌の発生・進展がどのようになるのかを、①化学発癌物質DENを用いたモデル、および②TSC1欠損による自然発癌モデル、の2つのマウスモデルを用いて検討することを目的としている。①モデルについてはp62欠損により、肝癌の発生が抑制されたことから、p62が肝癌の発生・進展を促進する働きを持つ事が示された。②については自然発癌し、さらにp62が蓄積していることを再確認できたことから、追加でp62を欠損させたマウスを作製した。予定通りこれらのモデルを確立し解析したことにより、重要な知見を得ることができた。

今後の研究の推進方策

TSC1欠損マウスは、肝細胞死、炎症性細胞浸潤、各種ストレスの蓄積による慢性肝障害を呈するため、p62欠損を付加することによるこれらの肝病態の変化を解析することで、肝癌以外の慢性肝障害の病態におけるp62の機能についても評価することができる。
p62はポリユビキチン化タンパクと結合して凝集体を形成するほか、NF-kB, mTORC1, オートファジーなどの制御にも関わっていることが報告されており、これらを幅広く解析し、どのシグナルを介してp62が肝癌を含めた慢性肝障害の病態に関わっているのかを明らかにする。
我々は以前、mTORC1の強力な抑制が肝障害を引き起こし、肝癌の進展を促進するなどの悪影響を及ぼすことを報告している。
一方で、肝癌の発生・進展や慢性肝疾患の病態進展にmTORC1が重要であるという報告が多数あるため、mTORC1が過剰発現した病態ではmTORC1の抑制が治療に結びつくと考えられる。つまり、過剰に活性化したmTORC1を適切にコントロールすることがもっとも重要であると考えられる。
興味深いことに、p62がmTORC1を正に調節するという報告(Mol Cell. 2011 Oct 7;44(1):134-46, Mol Cell. 2013 Aug 8;51(3):283-96)もあるため、p62の肝病態における役割について、特にmTORC1との関連にも着目して検討する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [国際共同研究] University of California, San Diego/sanford burnham研究所(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      University of California, San Diego/sanford burnham研究所
  • [雑誌論文] NF-κB Restricts Inflammasome Activation via Elimination of Damaged Mitochondria.2016

    • 著者名/発表者名
      Zhong Z, Umemura A, Sanchez-Lopez E, Liang S, Shalapour S, Wong J, He F, Boassa D, Perkins G, Ali SR,McGeough MD, Ellisman MH, Seki E, Gustafsson AB, Hoffman HM, Diaz-Meco MT, Moscat J, Karin M.
    • 雑誌名

      Cell

      巻: 164(5) ページ: 896-910

    • DOI

      10.1016/j.cell.2015.12.057.

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 肝癌および慢性肝疾患の病態におけるmTORC1阻害の影響2015

    • 著者名/発表者名
      楳村敦詩、山口寛二、伊藤義人
    • 学会等名
      第41回日本肝臓学会西部会
    • 発表場所
      名古屋国際会議場
    • 年月日
      2015-12-03
  • [学会発表] p62, a Key Regulator for Initiation and Development of HCC2015

    • 著者名/発表者名
      Atsushi Umemura, Yoshito Itoh, Maria T. Diaz-Meco, Jorge Moscat, and Michael Karin
    • 学会等名
      AASLD Liver meeting 2015
    • 発表場所
      Moscone Center in San Francisco
    • 年月日
      2015-11-17
    • 国際学会

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公開日: 2017-01-06  

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