研究課題
本研究は、様々な肝疾患で蓄積が認められる多機能分子、p62/SQSTM1(sequestosome-1, 以下p62)が、肝癌の発生・進展にどのように働くかを検討する事を目的とした。まず化学発癌物質(DEN)誘発肝癌モデルを用いた。p62を欠失したマウスおよびそのコントロールマウスに化学発癌物質DENを腹腔内投与し、8-10カ月令にて肝癌の発症を比較検討した。その結果、p62欠損マウスにおいてコントロールマウスに比してその発生が抑制されることが確認できた。次に、肝臓特異的TSC1(tuberous sclerosis complex 1)欠損マウスを使用した。このマウスではmTORC1(mammalian target of rapamycin complex 1)活性が恒常的に過剰に活性化した状態となる。肝臓特異的TSC1欠損マウスはmTORC1の恒常的活性化により、慢性肝障害を経て10-12カ月令で肝癌が自然発生し、肝臓の癌部および非癌部の両方においてp62が過剰発現し、蓄積していた。そこで、このTSC1欠損マウスとp62欠損マウスを交配することで肝臓特異的TSC1/p62欠損マウスを作成し、TSC1欠損マウスに発生する肝癌の発生・進展に対するp62欠損の影響を検討した。このマウスでは、驚くべきことに肝癌を全く発症しなかった。上記結果より、肝癌の発生・進展にp62が重要な役割を果たしている事、また癌部・非癌部の解析結果により、抗酸化ストレス反応を担うNRF2シグナルおよびmTORシグナルが関わっている事が判明した。これらは特定のドライバー変異、とくに治療ターゲットとなる遺伝子異常が見つかっていない肝癌において、将来の治療に繋がる知見であり、肝癌発症の重要なメカニズムの一端を明らかにしたと考えられる。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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